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成長アジアにあって通貨ルピー安に泣くインド=縮まらぬ中国との差(ucci-h)

2011年12月05日

■成長アジアにあって通貨ルピー安に泣くインド■

*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


rupees
rupees / jon smith.



■対ドルで18%もの下落をみせたインド通貨ルピー


経済成長の高いアジアで、例外的に通貨価値が下がっているのはベトナムくらいかと思っていたら、中国と並ぶ人口大国インドのルピーも下がっている(お隣のビルマの通貨チャットは上がっているのに……)。余談だが、インド人と商売する時は、為替の条件など向こうの都合のいい形で平気でごり押ししてくるので、かつては辟易したものだ。

インドの通貨ルピーは、2011年11月22日、対ドルで史上最低値の1ドル=52.37ルピーに下落した。2009年3月3日の安値を下回り、史上最低値だという。近年、経済もほどほどに拡大してきたインドなのに、なぜドルに対して、今年18%も下落してしまったのだろう。

East meets West: the U.S.-India open government dialogue
East meets West: the U.S.-India open government dialogue / opensourceway



■貿易赤字・経常赤字体質が通貨下落をまねいた


インドの景気が減速し、投資家のインド投資への熱も冷めているのだが、基本的には貿易赤字・経常赤字の体質が、通貨を弱いものにしている。

消費者物価上昇率は2桁に乗せ(9月、10.1%)、鉱工業生産指数の伸びは低く(9月前年比+1.8%)、失業率は高く(直近の昨年末のデータで9.8%、もっともインドの失業者の数はさらに膨大だろうから、よくわからないが......)、貿易赤字(国際収支ベース)は2010年も1300億ドル(約10兆1000億円)と恒常的、経常赤字も2010年440億ドル(3兆4300億円)と赤字が続いており、ほめられた経済パフォーマンスではない。

統計の精度はわからないが、中国のCPI+5.5%(10月)、鉱工業生産+13.2%(10月)、失業率4.1%、貿易収支2540億ドル(約19兆8000億円)の黒字(2010年)、経常収支3050億ドル(約23兆8000億円)の黒字(2010年)と比べると、雲泥の差である。


■タイ以下?脆弱なインド輸出産業

インド商工省の数字では、原油・石油製品の輸入が輸入総額3220億ドル(約25兆1000億円)(2010年通関ベース)の3割にあたる1000億ドル(約7兆8000億円)にのぼるのに対して、輸出品目に稼ぎ手がない。輸出総額2170億ドル(約16兆9000億円)のうち、1、2位の原油・石油製品(17%)と宝石・宝飾品(14%)は輸入品目の1、2位の品目であり、中継貿易品が多いことになる(ネットでは石油、宝石とも輸入超)。

輸出品のうち、石油、宝石を除くと、輸送機器157億ドル(約1兆2300億円)(7.3%)、繊維製品116億ドル(約9050億円)(5.3%)、機械110億ドル(約8590億円)(5.0%)が上位に来る。

インドの2170億ドル(約16兆9000億円)の輸出額と言うのは、再輸出品を除けば1500億ドル(約11兆7000億円)ほどになろうが、人口がインドの5.5%しかいないタイの2010年輸出額1950億ドル(約15兆2000億円)より、実質では少ないかもしれない。

もっとも、インドの場合、輸出工業は未発達だが、ソフトウエアのアウトソーシングなどのサービスが発展している。ソフトウエアの受託開発など、経常収支上の「サービス収支」が500億ドル(約3兆9000億円)近くの黒字となっている。海外の印僑からの送金等の経常移転収支の黒字とあわせ、貿易収支の大きな赤字を経常収支段階で860億ドル(約6兆7100億円)ほど縮めている。

India exports
India exports / Carol Mitchell



■想定を超えたルピー安が蝕むインド経済

インドのルピーの下落は、輸出や受託開発にはプラスに働くだろうが、価格が上昇してきている原油輸入代金をいっそう膨らませ、国内のインフレを押し上げ、経常収支赤字を拡大させる。けっして好ましいことにはならないだろう。

さらに、予想以上のルピー安は、インド企業の想定範囲を超え、ヘッジングでも追いつかないところが多いようだ。インド中央銀行は他国と違い、ドルを売り、ルピーを買い上げているが、ルピー安は抑えられない。

さらにインド企業が困っているのは、金利の安さにつられ、海外で多く起債したことだ。インド企業の海外起債は今年300億ドル(約2兆3400億円)に達したが、ドルでの元利支払いは、ルピー安により、ルピーで見ると54億ドル(約4210億円)分も増えることになる。これは痛い。

ルピー安の反転は、何をきっかけにやってくるだろうか?中国と並んでインドにも世界経済を引っ張ってもらわないといけないが、しばらくは期待できない状況が続きそうである。

20111204_インド_ルピー_経済
I'm Rich! / mynameisharsha


*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


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