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洪水路の上に建設された工業団地=急成長の功罪―タイ(ucci-h)

2011年12月06日

■タイの長期洪水対策の数々の水路案■

*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


Thailand/Thai floods/
Thailand/Thai floods/ / dany13


この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。
12月になった。乾季となった。タイ中央平原部の洪水はピークを過ぎ、あとは残った水が引くのを待つ時期となったが、その被害は近年にない大きなものとなった。


■古くから水の通り道だったタイ中央平原部


昔からタイの中央平原部は、洪水の通り道だった。かつてビルマに攻められたアユタヤでは、洪水があるがゆえに、ビルマの攻勢を追い返せたという。

それでも、ラーマ5世(1869~1910年在位)、ラーマ6世(1910~1925年)の時代になると、タイの近代化の中で、ランシット運河などの水路を築き、バンコク東部の地盤の低い土地を洪水路と定め、北からの水の流れをよくすることに努めた。

Thailand HAST [Image 4 of 11]
Thailand HAST [Image 4 of 11] / DVIDSHUB



■急激な経済成長の功罪


戦後、戦中戦後のタイの大立者ピブーンを1958年のクーデターで追い出し、翌年起こした再度のクーデターで自ら首相に就き、1963年の死去まで強権政治をしいた政治家にサリット・タナラット元帥がいる。

サリットは、独裁的な強権政治を行なったが、同時に最初の国家経済社会開発計画を進め、今日の経済成長の基盤をつくった。この開発推進の中で工業化が進み、環境整備よりも経済成長が優先されて行くようになる。
 
開発が進み、地盤の低い土地に工場が建てられたことにより、洪水被害が増すこととなった。1980年、83年の大規模洪水が続いたあと、現プミポン国王の指示を受け、巨大堤防が建設された。古くから洪水のやってくるチャオプラヤ川東部沿いに、JICAの協力により首都バンコクを囲む形で造られた「キングズ・ダイク」(王様の堤防)である。

しかし、今回の洪水では、ところどころ未整備だったり、つながっていない個所があったりと、十分首都の防水壁としての機能は果たせなかったようだ。

1992年には、バンコク都庁の都市計画局により、バンコク東部に自然洪水路が定められ、緑と白のコードが付されて、住宅や工場の土地と画された。しかし、これも次第に経済開発により、侵食されていくことになる。ミンブリのビチャーン議員などは、ガイドラインを変え、洪水路に道路や開発地域を作ることに成功していった。

洪水路を妨げた良い例が、スワナプーム空港である。スワナプーム空港は、バンコクではなく、サムート・プラカン県にあるが、これが造られたため、タイランド湾へのスムーズな水の流れが妨げられてしまった。今回もスワナプーム空港は守られたようだが、浸水したバンコク市街の水が引けるのが長引いてしまっている。


■今後の長期洪水対策


今後の長期的な洪水対策に、いろいろなアイデアが出てきている。以前アユタヤからバンコクの南まで外郭環状道路3号線をつくり、その外側に100kmの「ウォーター・モーターウエイ」大運河を7 年かけて築く案があることを紹介した。

【タイ大洪水】大運河「ウォーター・モーターウェイ」=洪水対策の切り札となるか(ucci-h)

現在、このほかに以下のような案が出てきている。


■「スーパー・ウォーターウエイ」構想


ひとつは、チュラロンコーン大学の「スーパー・ウォーターウエイ」構想である。シンブリの北、チャイナットからアユタヤへの134kmの運河、アユタヤからパトゥム・タニのランシットまでの32kmの運河、そしてランシットから海までの30km、総計200kmの運河を整備し、北からの水を蓄え、早めに海へ流してしまおうというものだ。

16億トンの水を蓄え、秒速6千トンで流せるこの運河をつなぐ案は、水路の外側に1kmの空き地を確保し、運河の両側に高さ6mの自動車道を走らせるという構想だ。この案の特徴は、新しく水路を掘るよりも安く出来るという利点がある。


■「洪水トンネル」案

もうひとつは、地下・トンネルグループが提唱している「洪水トンネル」案だ。この案は、アユタヤのバンパインから、パトゥム・タニを通りサムート・プラカンの海の出口まで、100kmに渡って東部外環道の下にトンネルを掘り、それを洪水時の排水路として使おうというものだ。

地下トンネルは2階建てで、上部デッキは、普段道路として使用される。下部デッキは、普段または小さな洪水の時に水路として使われ、大きな洪水の時は、上部デッキも交通を遮断し水路として使う。地下トンネル水路だと、地上のように途中で障害物が邪魔することがない。


■いずれにせよ必要となる「新しい水路」

いずれにせよ、自然の水路上に建てられた道路や工業団地を移すことはすでに無理だろう。となると、やはりいかに水路を使って水の流出をスムーズに速められるかがポイントになる。

どちらの案も、長さこそ100、200kmの違いこそあれ、バンコク東側に海に抜ける水路を造ろうというものだ。新たな掘削、既存運河の利用、地下トンネルといろいろなアイデアが出てきている。

さて水の引けた後、タイ政府はどのような長期的洪水対策を打ち出すことができるのだろうか。

Thailand/Ayutthaya/Main road Over flow
Thailand/Ayutthaya/Main road Over flow / dany13


洪水募金情報:

タイ洪水被害への義援金・募金受付まとめ(メモノメモ)

東南アジア(タイ以外|カンボジア、ベトナム、ミャンマー(ビルマ)、ラオス)の豪雨被害に対する義援金、募金、寄付受付がないか調べてみた(メモノメモ)

*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


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