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2011年12月06日
ipad / Sean MacEntee
2011年12月6日付南方都市報、財経網を参照した。
■発端
事件の発端は2000年、まだiPadの影も形もなかった時にさかのぼる。当時、世界第4位のディスプレイメーカーだった唯冠国際の台湾子会社が世界各地で「iPad」の商標権を獲得した。2001年、中国本土の子会社である唯冠科技(深圳)公司が中国本土での商標権を獲得している。
(2011年12月7日追記:唯冠国際の英語社名はProview。)
そして2006年、アップル社がiPadの発売を計画し始めた時、すでに唯冠が商標を取得していることに気がついた。アップル社は、製品を出さないまま商標が放置されていると主張。商標撤回を求めて、唯冠台湾子会社を英国で起訴したが、司法は唯冠に軍配をあげた。結局、2009年にアップル社は3万5000ポンド(約426万円)を支払い、世界の「iPad」商標権を獲得した。
これで問題が解決したはずだったが、思わぬ落とし穴が待っていた。ちょっとややこしい話なのだが、中国本土以外のiPad商標を持っていた唯冠台湾子会社と、中国本土の商標を持っていた唯冠深圳は、親会社は同じとはいえそれぞれ別個の会社。唯冠台湾が中国本土商標を勝手に売却することはできないというのが唯冠深圳側の主張だ。
■裁判と唯冠の狙い
ほとんど罠にはめられたような形になったアップル社は訴訟に突入。中国本土における「iPad」商標がアップル社にあることの確認と調査費用及び弁護士費用の計400万元(約4800万円)の支払いを求めた。
しかし、深圳市中級法院は全面的に唯冠深圳側の主張を認め、アップル社の訴えを却下した。今回の裁判は一審でまだ上訴することは可能だが、そこで敗訴してしまえば「iPad」商標を失うことが決定的となってしまう。ゆえに前回同様、金を払って商標を買うという展開も考えられそうだ。もっとも「iPad」がこれほどのビッグブランドになった今、400万円程度では許されそうにないが。
ちなみにこの唯冠社だが、栄光の時代ははるか過去のこと。今では債務に苦しみ、破綻寸前の状態にあるという。最大の取引相手であった米ポラロイド社が2008年に破綻し売掛金未回収の損失が出たこと。今年初頭に米国の複数の液晶ディスプレイメーカーから独禁法違反で訴えられ、裁判所から賠償命令を下されたことが要因だという。
この危機を救う唯一の希望が「iPad」の商標だと報じられており、金銭で解決するにしても安売りはしてもらえなさそうだ。アップル社がどう判断するのか興味があるところだが、ここは一つ、思い切って中国本土では「iPad」という名称を使わないというのはどうだろうか。代わりの名称として、一つ考えてみた。「爱板多」(Aibanduo)とか格好いいと思うのだが、どうだろう?
*2011年12月11日追記
続報記事を書きました。「【続報】中国でのiPad商標を失ったアップル=相手企業は1200億円を要求」
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