■インド航空産業の惨状■
*当記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。
Air India Boeing 747-200 / Deanster1983
■インド通貨ルピーの暴落
インド通貨ルピーが、2011年ドルに対して18%も下落し、史上最低値をつけていることを先日の記事でお伝えした。経済不振、インフレ進行といろいろあるが、主因は貿易赤字、経常赤字の拡大にある。
成長アジアにあって通貨ルピー安に泣くインド=縮まらぬ中国との差(ucci-h)
ルピーの下落は、多くのインド企業に悪影響を与えている。一番困っているのはインドの航空産業だ。インドの航空産業は、競争が激しい上にここに来ての燃油価格上昇である。なおかつ、これにルピー安という追い討ちが加わり、多くのエアラインで赤字が広がっている。
インドの航空会社と言えば、自由化前夜の1992年までは、国営の「エアー・インディア」と「インディアン・エアウェイズ」(07年にエアー・インディアと合併)のわずか2社のみだった。93年の自由化後、民間航空会社が8社ほど参入してきたのだ。
Action on a rapid Delhi - Mumbai - Delhi flight / vm2827
■インド航空会社、規模別ランキング
2010年現在の規模別ランキングは以下の通りとなる。
1位.ジェット・エアウェイズ(95年開業、07年にエアー・サハラを吸収)
シェア26%。
2位.キングフィッシャー・エアラインズ(05年開業。ビール会社の資本。07年にエアー・デカンを吸収) シェア20%。
3位.エアー・インディア(1932年開業、国営。07年インディアン・エアウェイズを吸収) シェア18%。
4位.インディゴ(2006年開業の格安航空) シェア16%。
5位.スパイス・ジェット(2005年開業のメディア資本による格安航空) シェア13%。
6位.ゴー・エアー(2005年開業の格安航空) シェア6%。
■拡大発展するインド航空産業の惨状空港の整備と共に旅客数が毎年大きく伸び、拡大発展するインド航空産業だが、採算はあまりにも悪い。
直近の2011年7~9月の四半期決算を見ると、トップのジェット・エアーが予想を上回る71億ルピー(約108億円)の赤字。2位のキングフィッシャーは47億ルピー(71億3000万円)の赤字。キングフィッシャーの過去3年の赤字は、480億ルピー(約728億円)にまで膨らんだ。当社は1日340便を300便に減らすという。
国営エアー・インディアも2007年の合併以降、赤字を毎年流し続けており、この間の政府支援は320億ルピー(約485億円)に上り、今期(2012年3月期)も650億ルピー(約986億円)という大型政府支援を得られることを期待しているようだ。
5位のスパイス・ジェットも、7~9月期は24億ルピー(36億4000万円)の赤字を出している。インド航空業界全体で今年は9月までで19%も乗客数は伸びた。しかし、「CAPA」(アジア太平洋航空センター)に、今期(2012年3月期)の決算では、25億ドル(約1940億円)もの赤字を出すと見られている。うち、20億ドル(約1550億円)の赤字分は、国営エアー・インディアによるものとなりそうだ。
わずかに、前回紹介した格安航空の「インディゴ」だけが、今期なんとか利益を捻出すると見られている。
インド・バンコクの空も賑わい始めた(2011年10月11日、チェンマイUpdate)
Kingfisher / JimReeves
■熾烈な競争、燃油高騰、そしてルピー安……
ジェット・エアー、キングフィッシャー、スパイス・ジェットの民間トップ3社の株価は、今年65%以上も下落している。激しい価格競争と、燃油価格上昇がインドの航空会社の採算を大きく悪化させているのだ。同様の事例が起きているアメリカでは、第3位アメリカン航空が破産法チャプター11の申請を行った。
インドへの乗り入れを増やすタイの航空会社。今後どう採算を取っていくのだろうか。
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