新華社英語版によると、胡錦涛国家主席は2011年12月6日、人民解放軍海軍共産党代表と会見したが、その際に「Prepare for warfare」(戦争に備えよ)と発言したという。
militarism / Harald Groven
■ついに胡錦濤までも危険球発言?!
2011年の中国外交といえば、南シナ海や東シナ海など海洋主権問題が大きな課題となってきた。
過激な環球時報は「海上摩擦で中国は交渉するだけではダメだ=必要な時には一罰百戒を見せねば」と煽っているし、もうちょっとお上品な人民日報ですら「南海の小国が頼みにする相手を間違えれば、その損失は恐ろしいほどのものとなろう」と脅していたりする。
中国官制メディアによる言葉攻めはそんなに意味がないことが多いので、そんなにまじめに取り合わなくてもいいのだが、しかし胡錦濤の発言となれば、重みが違う。BBCは「Hu Jintao tells China navy: Prepare for warfare」(胡錦濤、「戦争の準備をせよ」と海軍に指示)とのタイトルで報道。南シナ海問題や米国の「アジアへの帰還」戦略もからめて背景を説明している。
■「戦争の準備」は翻訳ミス
なぜ胡錦濤はこんな危険球発言をしたのか?!
と誰しも気になるところだが、ふたを開けてみるとなんということのない、「誤訳」系のパターンである。
加快推进海军转型建设,拓展深化军事斗争准备,扎实推进海军现代化,为捍卫国家安全、维护世界和平,作出新的更大贡献
海軍の構造転換を加速させ、軍事闘争の準備を拡大・深化させ、海軍の近代化を着実に推進し、国家安全を守るため、そして世界の平和を維持するために、新たな、より大きい貢献をなせ
というのが訓辞の内容。そんなに大きな意味のない決まり文句を並べただけの文章だが、「軍事闘争の準備を拡大・深化」という語句を、新華社翻訳者が「Prepare for warfare」と訳してしまったので騒ぎとなってしまった。誤訳とまでは言えないかもしれないが、誤解を与えかねない表現だ。本来は「戦争への備えを怠るな」ぐらいの意味でしかないのだが。
ちょっとした騒ぎとなってしまっただけに、翻訳を担当した新華社翻訳者がどんなお叱りを受けているのか、心配でならない。
(関連リンク:ニューズウィーク日本語版でも、このニュアンス取り違えの問題を取り上げている。「胡錦濤、海軍に「戦争に備えよ」」ニューズウィーク日本語版、2011年12月7日)■野田首相は好戦的?!その証拠となる発言とは
いつもどおりの決まり切った訓辞をしていたら、いつの間にか胡錦濤が「開戦準備だ、野郎ども!」と発言したことになっていた……。
何気に笑える話であると同時に、なんにもしていないのに警戒されるというちょっとかわいそうな展開でもある。が、「火のないところに無理やり煙を立たせる」やりくちは中国メディアの常套手段であるので、同情は禁物といったところか。
今年9月、野田佳彦首相は航空自衛隊閲兵式に出席「天下雖安,忘戦必危」(天下は安泰とはいえ、戦を忘れては必ず危うくなる)と訓示したところ、中国中央電視台(CCTV)の番組・
環球視線は、「戦争を忘れるなとは……。野田首相の好戦的な傾向が露わとなりました!」と報じている。
まあ、こじつけもいいところなのだが、日本に対するむかつきを表現するのに一生懸命ネタを探した結果なのだろう。
朝日とかアサヒとかasahiとか…。
過去、日本を戦争へと煽った反省がなされていないのが残念。