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2011年12月08日
*ภาพสะพานไทยลาว(ขณะนันยังไม่แล้วเสร็จ)より。
■3つの目の「タイ・ラオス友好橋」が完成
2011年11月11日に、メコン川にかかる3つ目の「タイ・ラオス友好橋」が開通した。1つ目は、1994年4月にタイの東北部の国境の街ノンカーイからラオスのターナレーンまで3.5kmに架けられた友好橋。豪州企業が3000万ドル(23億3000万円)をかけて造ったと言われる。ラオスの首都ビエンチャンへはすぐだ。この橋には2008年から鉄道が通るようになった(15分、20バーツ(約50円))。
2つ目は、2006年12月に竣工した「タイ・ラオス第2友好橋」。日本のODAの借款80億円で、三井住友建設によって作られた。タイの東部国境ムクダーハーンとラオス南部の街サワンナケートの2.1kmを結んでいる。この橋は、ベトナムにもつながる東西経済回廊として重要になってきている。
そして、2011年11月に完成したのが、このいわば「タイ・ラオス第3友好橋」。ムクダーハーンの北80kmにあるナコーン・パノムの街とラオス中部のカムアン県を結ぶ。5700万ドル(約44億3000万円)ほどかけて完成したものだ。ラオスを経て、ハノイが近くなる。
なお、北タイのゴールデン・トライアングル(チェンセーン)の東、チェン・コーンでは、ラオス側のフエ・サイの街へ行く場合、現在は渡し舟で河を渡っている。現在、2012年末完成をめざし、「タイ・ラオス第4友好橋」建設の工事が始まっているが、完成はなお数年先になりそうである。ここが完成すれば、中国雲南省へ一番近い場所となる。
今回できたナコーン・パノムの第3友好橋はどんな位置づけになるだろうか。ちなみに、タイ東部の街ナコーン・パノムは、クメール文化圏だ。ナコーン(都)・パノム(丘)のパノムは、カンボジアの首都プノン(丘)・ペン(ペン夫人)のプノンと語源は一緒なのだろう。
Mekong River, Thailand and Laos Border / Eustaquio Santimano
■狙いは中国・ベトナムとの交易拡大
タイ・ラオス友好橋の建設といっても、ラオスとの交易・交流を拡大しようというわけではない。その背後のベトナム、そして中国との交易が本来の意図である。なかでも、東西回廊の狙いは、ベトナム・ハノイの向こう側にある中国南部、南寧市や桂林市のある広西チワン族自治区との交流だ。昆明市、麗江市のある中国雲南省なら、タイ北部からのアプローチが近いが、昔の広西省にはタイ東部からのアプローチが近い。
広西チワン族自治区は、人口5000万人、GDPは推定1300億ドル(約10兆1000億円)(2010年)と、ベトナムの1035億ドル(約8兆400億円)を上回る規模である。西隣りの雲南省は、人口4500万人、GDPは同じく1040億ドルほどと、現在のベトナムほどの経済規模を持つ。
広西チワン族自治区までは、ナコン・パノムから岩山のラオスの12号線を横断して、ベトナム経由で1090kmの距離である。時間は税関手続きなどすべてを含み31~34時間かかるという。それでも、ムクダーハーンの第2友好橋ルートでラオスの9号線を走りベトナム中部へ出て、そこから中国へ向かって北上するルートよりも、260kmほど短くなるという。時間にして約5時間近く短縮される。
■広西チワン族自治区との果実貿易
人口5000万人の広西チワン族自治区は、タイの果物の重要な市場だ。昨年の輸出額は5割も伸びて、30億ドル(約2330億円)に達し、量も200万トンと倍増した。中国とは23種類の果物の2国間自由貿易を交わしており、活発な伸びをみせている。
マンゴー、マンゴスチン、ラムヤイ、ドリアンが運ばれる。多くが今まではムクダーハーン第2友好橋経由だったわけだが、第3ブリッジの完成により、ナコン・パノム経由が中心になろうかとみられている。橋ができる前でも、毎日果物を積んだ30台のトラックがフェリーでラオスのカムアン県に向かっていたが、今後はもっと多くのトラックが橋を渡れることになる。
■諸処の問題もはらむナコーン・パノムルート
しかし、ナコーン・パノムがムクダーハーンに取って代わるには諸処の問題もある。ラオス南の9号線はフラットなのに対して、ナコーン・パノムからの12号線は山道が続き、輸送コストはムクダーハーンからよりもかかりそうだ。また、1、2号友好橋のゲートが、朝6時から夜10時まで開いているのに対し、この3号ブリッジは今のところ夕方6時には閉まってしまうことも大きなデメリットである。
いずれにせよ、この第3号友好橋の開通により、タイから越中への輸出が増えることは間違いないだろう。さて、中国からは一体何が運ばれてくるのだろうか?
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*当記事は2011年11月27日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。