中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月09日
中国のエレクトロニック・ミュージック・シーンのうねり~ME:MO『Peking Scene』を中心に(COOKIE SCENE)
そして、現在、今後より目立った存在になっていくだろうアーティストとしては、北京を拠点に活動する翟瑞欣(ザイ・リュウシン)の単独プロジェクト ME:MO(ミモ)を挙げたい。昨年に出た、最新作にして3作目になる『Peking Scene』で表そうとするものは彼が生まれ育った北京の失われた情景をテーマにしたノスタルジックな回想録は多くの人に受け入れられたのも記憶に新し い。鳥の囀り、バイクの音、子供たちの嬌声などに少しジェントル過ぎるともいえるエレクトロニクスと、揺れるように鳴るアコースティック・ギター、暖かな シンセ、口笛まで全体を通して柔らかい音風景はまるで、コリーンの『Golden Morning Breaks』やムームの初期作群を彷彿とさせる上品なエレクトロニカ作品になっていた。思えば、グーテフォルクの『Tiny People Singing Over The Rainbow』からトランズ・アム『Sex Change』、シー・アンド・ケイク『Everybody』までを好んで聴いていたと2007年の『原景/Acoustic View』のアルバム・インタビュー時に言っていたが、そのサウンド・センス通り、相変わらず優等生ではみ出さない音の紡ぎ方は、キエラン・ヘブデンの ワークを思わせるところもある。しかし、翟の場合は彼ほどフットワークが軽い訳ではなく、音の置き方から構成、果ては活動スタイルまでその音は中国のエレ クトロニカ・シーンの中でもどちらかというと地味な存在でもある。