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スマートテレビ競争が始まった中国=本命アップルの参入をライバルも期待

2011年12月09日

記事「熱狂の中で迷うスマートテレビ」(南都週刊、2011年12月7日)が面白い。世界に先駆けてスマートテレビ時代に突入しようとしている中国。しかし、いまだにスマートテレビについて理解している消費者は少ない。その解決には本命アップルの「iTV」まで待つ必要があるのかもしれない。


20111209_写真_スマートテレビ2

■中国ネットテレビの敗戦

そもそもスマートテレビとはなんなのか?たんにインターネットができる、ネット経由で動画が見られるテレビという意味ならば、中国では2006年頃から登場し、各社激しく新製品を出しては敗北という繰り返しを続けていた。

2009年の記事だが、山谷剛史さんの記事「「今さら」中国でテレビとネットの融合に海賊版と政府の壁」(Ascii.JP、2009年9月8日)が、テレビメーカーの公式動画配信サイトが海賊版コンテンツを流しているというすごすぎる状況について報じている。

テレビメーカーが乱立し、劇的な値引き競争を繰り広げる中国。ブラウン管から液晶に戦場を移しても、新要素はすぐに陳腐化し泥沼の価格競争を繰り広げてきた。ネットテレビは付加価値を付けたいという中国テレビメーカーの悲願でもあった。


■アンドロイド採用のスマートテレビが続々リリース

そして今年夏、中国のテレビ業界に異変が起きる。各社は従来のシステムを捨て、アンドロイド搭載のスマートテレビを続々とリリースしている。

20111209_写真_スマートテレビ1


例えばタオバオモールで販売されているTCLのアンドロイドスマートインターネットオンラインテレビ「L37E5300A」は、38インチで4000元(約4万8000円)という安さ。それでいて、アンドロイドを改造したOS「アンドロイドプラス」を搭載し、キネクトのように体の動きを読み取ってテレビを操作するという機能まで備えている。

TCLが先陣を切ったが、中国大手テレビメーカーは軒並みアンドロイド搭載TVを発売している。プレーヤーはそれだけではない。記事「スマフォ、タブレット、PC、テレビがクラウドでつながる=レノボ新戦略でクラウド戦国時代到来か」で紹介したが、中国PC最大手・レノボは来春にもスマートテレビを発売する予定だ。

伝統的テレビメーカーに加えPCメーカーも参入するわけだが、さらに百度などのIT企業も参入する可能性は十分にある。今までも過当競争が深刻だった中国テレビ市場だが、スマートテレビでさらに競争が激化へと向かいそうだ。


■中国人の「テレビ離れ」

スマートテレビへと一斉に舵を切った中国テレビメーカー。その背景には従来の付加価値競争以外の要因もあるという。すなわち「中国人のテレビ離れ」だ。CNNIC、DCCIなどの調査機関によると、すでに4000万人もの中国人がテレビを見なくなったという。テレビの視聴率は過去1年間に13%低下した。

一方で動画視聴サイトは大人気。2010年の放映回数はのべ100億回を突破した。動画視聴サイトのユーザーのうち、3分の1はテレビを見なくなったという。

今すぐテレビがダメになるとまでは思えないが、なにせネット上に海賊版無料コンテンツがあふれているお国柄だけに、他国以上の速さでテレビからネットへのシフトが進むことも考えられる。「テレビ離れした人々も買うテレビ」こそスマートテレビの目標と言えそうだ。


■スマートテレビ3大陣営が待ち望む本命アップルの参入

今、スマートテレビには3つの陣営が形成されつつあるという。Bada OSを開発し、OSからハードまですべてを持つサムソン。ソニー、Vizio、そして中国メーカーが採用するグーグル。HTML5、CE-HTML、HbbTVを採用するLG電子、シャープ、フィリップスがそれだ。

3大陣営は積極的な動きを見せており、スマートテレビ分野は今後ますます過熱することが予想される。中国では2012年に800万~1800万台が販売されるとの予想もある。

一方で、問題は「そもスマートテレビとはなんぞや?」というイメージについて、消費者にまだメッセージが届いていないことにあるという。そこでスマートテレビメーカー各社はひそかに本命・アップルのiTVの出現を待ち望んでいるという。

スマートフォンという分野そのものを創造したiPhoneの奇跡をもう一度、アップルが繰り返してくれるならば、スマートテレビもまた分野として確立する。アップルがどれほど成功したとしても、市場シェア的に大半を占めるとは考えづらい。アップルによる「消費者の教育」が成功すれば、ライバル各社にもチャンスが訪れるはず。これがテレビメーカー関係者の期待するところだ。

果たしてスマートテレビ時代は本当に到来するのか。分野として成立するのか。その最大のカギはやはりアップルが握っているようだ。


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 コメント一覧 (4)

    • 1. 天天
    • 2011年12月10日 00:57
    • いつも楽しい記事をありがとうございます。

      さて今回は自信がないのですが、
      「各社は従来のシステムを捨て、アンドロイド搭載のスマートフォンを続々とリリースしている。」の部分、もしかしたら「スマートテレビ」かもしれないと思いました。

      それにしても「スマートテレビ」、放送時間に拘束されずに膨大なアーカイブから視聴コンテンツを選べるわけで、どう考えても使いやすい検索機能が不可欠です。

      となると大画面テレビとキーボードの組み合わせもありですが、やはりタッチパネルで文字入力ができ、携帯しやすく、動画サイトの方式変更にも対応できるような、ノートパソコンやiPad的なものが売れるのではないかと思っています。
      台所で見たり、寝ながら見たり、トイレに持って行けたりできるもの。
    • 2. Chinanews
    • 2011年12月10日 10:21
    • >天天さん
      ご指摘ありがとうございます。修正しました……。いつもすいません。

      おっしゃるとおりで、インターフェースや検索性能がカギですよね。うちもソネットのネットテレビをちょっと契約しましたが、コンテンツの少なさ以上に操作性がひどかったのが残念でした。

      スマート大画面でネット動画を見たり、ゲームをするかというのも大きな問題ですよね。記事にも書きましたが、結局、「スマートテレビで何をするのか」というイメージがまだないということでしょうね。

      iPadも登場初期、「あんな大きな画面は不必要」と言われていたのを思い出します。新しい使い方を提案できるかが勝負なんでしょうけど……。自分にはあんまり想像つかないです。
    • 3. 天天
    • 2011年12月13日 07:01
    • 中国でスマートテレビが売れるとしたら、「番組放送直後にCM抜きでその番組を楽しめる」といったサービスでしょうか。
      ニコニコ生放送の「タイムシフト予約」のような機能で、事前に登録しておくことで、番組を後から見ることができ、さらにCM抜きで該当番組が楽しめるような。

      それであればアンドロイドでも実現可能な気がするし、VTRやHDDレコーダーの代わりにもなるし、ネット上の大量のアーカイブから検索する必要もないのでスマートテレビでも実現可能な気がします。

      ---

      さて今回気付いた点は、

      「史上最高価格から一転、急落したゴム価格=世界一の生産国タイを直撃(ucci-h)」のリンクの部分、「チェンマイUpdate、2011年12月31日」->「2010年12月31日」

      「ビル・ゲイツが中国政府を訪問=新型原子炉開発の提携について協議」の「推進波炉」->「進行波炉」×3

      です。

      巨大な使い捨てカイロを思い起こさせる「進行波炉」ですが、水や空気と反応しやすいナトリウムが冷却材に使われていそうな点が心配です。
      冷却材に普通の水が使用できるなら、かなり安全だと思いますが。
    • 4. Chinanews
    • 2011年12月13日 14:14
    • >天天さん
      いつもご指摘ありがとうございます。「今回は完璧」と言われる日を目指して精進します。

      スマートテレビですが、中国は「三網融合」(電話、ネット、ケーブルテレビの融合)という意欲的な政策を推進しており、番組のアーカイブ配信まではもうすぐというイメージがあります。

      CCTVのネット版・CNTVも相当量のアーカイブを無料(!)公開していますし、既存ビジネスの足元を崩しかねないチャレンジにも積極的なのが日本と違うところです。

      商売になるかどうかは後から考えるという発想なんでしょうが、羨ましいような、ちょっと不安もあるような……。

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