中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月11日
Gum / twicepix
■史上最高値から一転、急落するゴム価格
「キロ100バーツ(3.30ドル)を上回る138バーツ(4.60ドル)という史上最高値をつけた、タイが世界生産の4割を占める天然ゴムの価格は、今後も堅調が続くのだろうか」と書いたのは、2010年暮れのことであった。
(関連リンク: 「高値を続けるゴム価格のゆくえ」チェンマイUpdate、2010年12月31日)
あれから10カ月が過ぎたが、今度は急落するゴム価格の下支えにタイの生産組合は苦労している。タイで標準的な「RSS3」(Ribbed Smoked Sheet Grade3)の価格は、9月まではキロ130バーツ(約326円)前後だったが、10月には100バーツ(約251円)に、11月半ばには80バーツ(約200円)台に下がっている。
国際価格も9月受け渡しで4.6ドル(約357円)ほどだったのが、10月には4.2ドル(約326円)、12月分は3.23ドル(約250円)にまで下がっている。
■中国のゴム輸入が減速
投機にさらされる商品とは言え、数ヶ月で4割近く下がった計算だ。タイの洪水により、タイヤの需要家である自動車生産の中止したこともさることながら、いまやタイ産ゴムの最大の需要家である世界最大の自動車生産国・中国の買い控えが大きいようだ。
タイは昨年、270万トンのゴムを輸出したが、中国はそのうち44%に相当する120万トンを買い付けている。そのため、中国のゴム在庫は膨れあがっているとも言われている。価格下落に対抗するべく、タイ生産者は25%の生産削減を決定。3日に2回のタッピング(ゴム液の採取)を2日に1回に減らすことで、25%の減産を図る方針だ。
■業界が求める輸出税軽減
また、業界は輸出税の軽減を政府に求めている。新ゴム園の開発推進に使われるタイのゴム輸出税だが、以前はキロあたり1.4バーツ(約3.5円)が徴収されていた。2010年10月から価格に応じて課税する方式に切り替えられた。
価格がキロ40バーツ未満の場合の輸出税は0.9バーツ。40~60バーツで税は1.4バーツに。60~80バーツで税は2バーツ。80~100バーツで税は3バーツ。100バーツ以上で税は5バーツとなる。キロ40バーツ以上の価格の場合は、従来よりも増税となる。
競争相手のインドネシアやベトナムは、付加税を免除することで輸出促進を図っている。そこで、せめてマレーシアと同等のキロ1.4バーツ以下にして欲しいというのが、タイ・ゴム業界の要望だ。ちなみに高い輸出税の影響で、ゴムの産地であるタイ南部では、密輸出が増加しているとも伝えられている。
■投機商品としてのゴム
タイ農務省は、100億バーツ(約251億円)規模の市場介入ファンドの創設を考えているというが、果たして効果があるのだろうか。農業協同組合は市場からのゴムの買い取りを検討中。インドネシア、マレーシア、タイで構成する「IRC」(国際ゴム・コンソーシアム)も会合を開き、対応策を講じている。
世界のゴム生産の4割を占めるタイ。加工品を含め、ゴムの輸出は約1兆円を稼ぎ出している。しかし今回の価格下落で、100万ゴム農家は我慢を強いられることになりそうだ。投機市場にさらされている限り、商品価格の高騰急落は避けられないのだから。
*当記事は2011年11月23日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。