中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
*小山史著『上海でホストになったボクの夢のような100日間』。書影クリックでamazonページへ。
■奇妙なホストクラブで繰り広げられる青春物語
たまたまアマゾンを検索していて出会ったのがこの本。日本人が上海でホストになった実録という触れ込みが気になって購入してみた。読む前に想像していたのは、「闇金ウシジマくん」ばりの高級クラブどろどろの内幕、高級酒を煽る富二代(金持ちのぼんぼん)、玉の輿を狙う美人ホステス……といったところだったが、読んでみてびっくり。なんともさわやかな青春小説だった。
そも、著者が勤めたホストクラブというのも、私がイメージしていたような「お城のようなナイトクラブ」ではない。日本式KTV(カラオケクラブ。個室でお酒を飲みながらホステスさんと遊ぶところ)が閉店後に間借りして開いたという、ちょっと毛色が違ったホストクラブなのだ。
たいしてお客が来ることもなく、ひまをもてあました「ホスト」たちはトランプをしたりだべったり。男同士できゃっきゃうふふと時間をもてあましている。著者は彼らイケてない「ホスト」たちに「上海ボーイズ」という呼び名を付けているのだが、これが言い得て妙。ボーイズと呼ぶしかない若さというか、幼さというか、青臭さだ。
■中国人と同じ視線から見た「きづき」
そんなイケてないボーイズの中に著者も混ざって「ホスト」生活をスタートさせる。100日間にわたるホスト生活の中で出会った出来事、ボーイズたち、そしてお客の中国人ホステスたちが、鋭い観察眼によって生き生きと描かれている。
物語は時系列順に進行していくのだが、上海の地方出身者差別など中国社会を読み解く知識が各章にちりばめられているのは構成の妙と言うべきだろう。大上段に構えた中国社会解説本にしたり、あるいは「中国女性の落とし方」的なハウツー本にしたりすることもできただろうが、あくまで青春物語としての軸を徹底している点がすばらしい。
著者が過ごした100日間を追体験したような気持ちになれる青春物語として、あるいは中国社会に対して「きづき」を与えてくれる一冊として、この『上海でホストになったボクの夢のような100日間』はオススメできる。