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欧州企業を「底値買い」せよ=中国が20兆円超の新政府系ファンド設立へ

2011年12月11日

欧州や米国に大量の「中国国有企業」が誕生するという、不思議な事態が起きるかもしれない。


High Bill.
High Bill. / Jakob Montrasio


■日本と中国、欧州債務危機に対する反応の違い

ギリシャから始まり、今や欧州各地に飛び火した感のある欧州債務危機。悲観論者からは「ユーロ解体の危機かどうかではなく、いつ解体するかの問題だ」という言葉まで飛び出るほどの事態だ。ユーロ圏の救済の切り札的存在として期待されているのが欧州金融安定基金(EFSF)だ。

世界最大の外貨準備を保有する日本、そして第2位の中国に期待が集まっている。しかし、両国の対応は真反対だ。日本は「EFSFが格下げされても買い続ける」と、愚直に支援する姿勢を明確にしている。
(関連リンク:「日本、EFSF債購入継続の方針-格下げ警告にもかかわらず」WSJ、2011年12月8日)

一方の中国は、「外貨準備で欧州の危ない債権買えないです。十分な外貨準備が必要。それがアジア金融危機の教訓(キリッ」「(危なっかしい)国債買うよりも、直接企業の株とか買っちゃおうかな」と、欧州が作った救済枠組みに乗っかるのではなく、独自に“おいしい”企業を買う「底値あさり」に色気を見せている。
(関連リンク:「中国:欧州の債券ではなく直接投資を希望する」中国鋼企網、2011年11月30日)


■具体化した直接投資(底値あさり)の手段

そうした中、「底値あさり」の具体的ツールとなりそうな政府系ファンド(SWF)を中国は設立する方針だという。

中国人民銀、3000億ドルの外貨投資機関創設へ 欧米が対象=関係筋
ロイター、2011年12月10日

関係筋によると、中国人民銀行(中央銀行)は、外貨準備の運用利回り向上のため、総額3000億ドルを運用する新機関を設立する。新機関は2つの基金を運用する予定。1つの基金は米国に投資し、もう1つの基金は欧州に投資するという。

(…)新たな基金は、同局傘下の中国華安投資有限公司と同じようなスタイルになるという。華安投資は海外上場企業の株式に投資している。中国指導部は以前から、通常の国債投資ではなく、欧米の実体経済への投資を目指す意向を示している。

記事中では「新機関の設立は欧州債務危機発生前から計画されていた」とのことだが、本当だとすると絶妙すぎるタイミングとしかいいようがない。「底値で株をあさろうなんて思ってませんよ。前々からの計画なんです」というエクスキューズに聞こえなくもないが……。

中国のSWFといえば中国投資有限責任公司(CIC)が有名だが、新たに設立されるSWFは総額3000億ドル(約23兆4000億円)とCICを上回る規模となる。ちなみに財経網によると、米国投資担当の「華美」ファンド、欧州投資担当の「華欧」ファンドという2つのファンドが設立される見通しだという。

ユーロの政治家の皆様はご不満だろうが、3000億ドルも株式に投資してくれるならばそれはそれでありがたい話ではある。もっともこれだけの金を持っているのだから、たんなる投資にとどまらず経営権を狙う買収にまで踏み込むのではないかという危惧を持つ人も少なくないはず。気がつけば、米国や欧州に大量の「中国国有企業」が誕生している、なんて未来もありえそうだ。


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