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2011年12月11日
iPad / Yagan Kiely
■前回のおさらい
前回記事:「罠にはめられたアップル?!全面敗訴で中国でのiPad商標を失う」
2011年12月5日、広東省の深圳市中級法院は、米アップルが起こした商標保有確認の訴訟を却下し、唯冠国際(Proview)の子会社・唯冠深圳が商標を保有するとの判断を示した。
唯冠の子会社・唯冠台湾が「iPad」商標を獲得したのは2000年のこと。自社ブランドの候補として獲得していたのだろうが、商品として販売はしていなかったようだ。2006年、iPadの開発計画を進めていたアップルは商標が放置されていると申請。商標撤回を求めて裁判に訴えたが敗訴し、唯冠台湾の商標が認められている。最終的にアップルは3万5000ポンド(約426万円)で、商標権を購入している。
前回の記事には書かなかったが、ちょっと面白いのは2006年の争いでは、アップルは自ら表に出ることなく、英IP社というダミー会社を前に立てて争っていたことだ。敗訴したものの、400万円というタダ同然の金額で商標を手に入れたのだから、実質勝利と言ってもいいぐらいだろう。もしアップルの主力ブランドになると知っていたならば、唯冠の皆様ももっとふっかけていたのではないか。
あるいはこの遺恨が残っていたのかもしれないが、唯冠は「アップルに売った商標は台湾子会社が持っていたものだけ。中国本土での商標は深圳子会社の所有なので、唯冠台湾が売れるはずはない」と主張し、問題が明るみに出た。アップルは自社の商標所有確認を求めて2010年初頭に提訴。この12月5日に一審敗訴が決まった。
■1200億円よこせや!『銀と金』ばりの神経戦?!
唯冠国際はディスプレイ製造大手として知られているが、いまは破綻状態にある。2010年8月から株の売買はストップしたまま。12月23日から債務整理、再建の話し合いが始まったとの公告が出ている(華富財経)。12月9日付南方都市報によると、同社の純負債は28億7000万元(約344億円)。また期限を迎えた融資38億元(約456億円)の返済が滞っているという。iPadの商標一発でこの借金を全部返したいというのが同社の悲願だろう。
ちなみにこのアップルとの抗争に、唯冠関係者はほとんど表に出てくることがない。コメントするのは唯冠の肖才元弁護士と、代理企業という謎の立場にある和君創業の李粛総裁だけ。彼ら2人からは、マンガ『金と銀』にでもでてきそうなブローカーのにおいがぷんぷんするのだが……。
ちなみに李総裁は「商標の値段は100億元(約1200億円)やで~」とぶちあげている。とりあえずはつり上げられるだけつり上げておけ、というむしる気まんまんの宣言だ。さすがに中国メディア、ネット世論も「ぼりすぎ」との評価が拡がっているが。このまま裁判が長引けば、iPad3の中国発売が遅れかねない事態だけに、アップル好きの中国人的には許せない存在かもしれない。
なお、一部日本メディアは唯冠が賠償を求めて提訴したとも報じているが、中国語メディア、英語メディアをみた限りではまだ裁判は起こしていないようだ。「100億元よこせ」発言を起訴と勘違いしただけではないだろうか。唯冠の肖弁護士は「アップルはんは時間稼ぎのために上訴するでしょうなぁ」と余裕の発言をしている。今後もたっぷりと法廷闘争を繰り広げながら、妥協点を探っていくという方針なのかもしれない。
大ドチを踏んでしまったアップル。最終的に勉強料がおいくらになるのか、気になるところだ。
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