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中国漁船船長、韓国海洋警察官を殺害=黄海の「漁業戦争」

2011年12月12日

2011年12月12日、朝鮮半島西側の黄海で、不法操業の中国漁船を拿捕しようとした韓国海洋警察職員が死亡する事件があった。中国漁船船長がガラス片を振りまわして抵抗し切りつけられたためで、他1人が負傷した。


20111212_中国漁船_連環_1
*お互いの船を結びつけ、韓国海洋警察から逃走する中国漁船。2011年11月19日付、西祠胡同の報道。



■割のいいギャンブル=違法操業にかける中国漁船

中国漁船取締り中、韓国海保の2隊員死傷 腹切りつけ
asahi.com、2011年12月12日

韓国海洋警察庁によると、朝鮮半島西側の黄海沖で12日、不法操業中の中国漁船を拿捕(だほ)しようとした同庁の職員2人が、中国漁船員にガラス片で脇腹などを切りつけられた。2人のうち1人は死亡した。同庁は漁船員9人を拘束し、取り調べる予定だ。

韓国近海での中国漁船による「違法操業」、抵抗は今に始まったことではない。過去5年で韓国海洋警官は2人が殉職、27人が負傷した(朝鮮日報)。今回3人目の殉職者を出すにいたったわけだが、近年、中国漁船の「抵抗」がますます激しくなっていることがあげられる。

上述朝鮮日報記事によると、中国漁船は同時に1000隻(!)違法操業しているような状態で、いかに韓国海洋警察ががんばってもそのすべてをとらえることなど到底不可能だ。運悪く捕まったら保釈金を払うだけ。そのリスクを考えても、汚染と乱獲で魚がいない中国近海よりも黄海で漁をしたいというのが違法漁船の発想だ。

もし運悪く1000隻のうちの1隻、海上警察のターゲットになったとしても中国漁船は最後まであきらめない。角棒を振りまわして抵抗したり、複数の漁船をロープで固定しそう簡単に手出しできないようにする「連環の計」を疲労して抵抗する。中国と韓国の排他的経済水域(EEZ)はいまだ確定していないため、グレーゾーンの海域にまで逃げ込めば、韓国側も外交問題となるために手出しできない。そのわずかな距離だけ逃げ切ればいいと必死なのだ。

20111212_韓国_中国漁船
抵抗する中国漁船員と海洋警察。2011年11月19日付、西祠胡同の報道。


■世論と中国とに板挟み=韓国政府の悩ましい課題

韓国側もヘリから催涙弾や閃光弾を打ったり放水銃をぶっ放したりと頑張っており、もはや「漁業戦争」の様相を呈している。

しかし、ハイテク装備を駆使した取り締まりもやりすぎると中国政府から「より配慮のある対応を」とか釘を刺されてしまう。問題を複雑化させているのは黄海の排他的経済水域(EEZ)未確定という問題だ。「離於島/蘇岩礁」(ウィキペディア)を島と認めるか、岩と見なすかの駆け引きが続いている。

昨年の「中国違法操業漁船が韓国警備艇に体当たり」事件では、中国外交部は「中韓漁業暫定措置水域で拿捕しようとした韓国側の違法行為。謝罪と賠償を要求する」と反撃し、韓国側の追求が立ち消えになるという一幕もあった。
(関連記事:<中国漁船体当たり事件>中国政府の逆ギレ反撃=「韓国政府による違法行為だ」

昨年はたまたま尖閣諸島沖中国漁船衝突事故の後ということもあり、「いじめられる中国漁民」という構図、世論にナーバスになっていたという背景もあろうが、韓国側がばりばりと中国漁船を取り締まり話が大きくなれば、いつ外交問題に発展してもおかしくないという悩ましい状況だ。

今回の死亡事件で韓国世論の硬化は必死だろうが、韓国政府が強圧的に出すぎると中国側も反発する可能性もある。李明博政権にとっては大変厄介な課題だと同情してしまうが、EEZが確定されないかぎり中国違法漁船の横行と暴力的抵抗という事件は続くことになるだろう。

【韓国海洋警察官刺殺事件】

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