韓国海上警察職員が中国漁船船長に刺殺された事件で、韓国メディアが猛り狂っている。それはまだ理解出来るのだが、中国側まで逆ギレし猛り狂うというなんとも奇妙な状況が生まれている。
*画像は華声在線の報道。
■「中国漁船の凶暴化、知能化」
2011年12月12日、朝鮮半島西側の黄海で、不法操業の中国漁船を拿捕しようとした韓国海洋警察職員が死亡する事件があった。中国漁船船長がガラス片を振りまわして抵抗したためで、他1人が負傷した。
(関連記事:中国漁船船長、韓国海洋警察官を殺害=黄海の「漁業戦争」)
近年、黄海における中国漁船の違法操業は急激にエスカレートしている。韓国が拿捕した中国漁船は今年472隻。昨年の330隻を大きく上回っている。それでも中国漁船の数は一向に減らない。なんと1万隻が韓国周辺近海で活動しているとも伝えられる。
(関連リンク:「流血の海、中国漁船の凶悪化浮き彫り」MSN産経、2011年12月13日)
海上警察が摘発できるのはごくごく一部だけ。しかも、ターゲットにされた中国漁船も、鉄パイプや斧を武器として激しく抵抗している。いや、そればかりか、さらに新たな戦術まで編み出しているという。
<中国の違法操業>中国船長、防刃チョッキの保護ない横腹を刺す(2)
中国漁船がますます凶暴化・知能化している。10余隻をロープでつないで集団で抵抗する連環計を使ったりもする。先月28日に忠清南道泰安郡(チュンチョンナムド・テアングン)格列飛列島の西側24マイル海上で拿捕された100トン級中国漁船2隻は取り締まりが始まると、あっという間に「亀甲船(鉄船)」に化けた。船体の両側に1メートル以上の鉄格子とともに高さ1.5メートルの巨大な金網が張られた。
*太字はChinanews
*お互いの船を結びつけ、韓国海洋警察から逃走する中国漁船。2011年11月19日付、西祠胡同の報道。■違法漁船に実弾射撃の可能性も示唆人命が失われたということで、韓国でもこの問題は注目を集めている。
李明博大統領は逮捕された中国漁船船長に厳罰を下すよう指示したほか、根本的な問題解決案を立案するよう関係部局に命じた(
聯合早報)。また在韓国中国大使に抗議した際には、今後は違法漁船の取り締まりに実弾射撃を用いる可能性にまで言及したという(
鳳凰衛視)。
韓国メディアも大騒ぎで、上述の「凶暴化」やら「流血の海」といった表現で、センセーショナルに事件を報じているようだ。引きずられたのか、
Asahi.comまで「中国漁船が狂暴化 排他的経済水域、韓国職員を刺殺」というすごいタイトルを付けている。
■中国サイドの逆ギレでは、中国はというと、なぜか逆ギレの気配が漂い始めている。12日の中国外交部定例記者会見では、劉為民報道官は、韓国と密接に連携し今後の対応を協議すると発言したが、その後がちょっと不思議なコメントに。
「中国主管部局は複数回にわたり、漁民の教育と出漁漁船の管理強化に努め、越境しての操業、違法漁業の抑止に努めてきた」と中国側の努力をアピールするのはいいのだが、「
同時に韓国側が中国漁民の合法的権益を十分に保障し、人道主義的な待遇を与えることを希望する」と反撃している。
中国メディアの論調はもっと過激だ。
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環球時報は「
韓国メディアが『中国漁民が海上警察官を刺殺』と過熱報道」というタイトルで、不満をあらわに。
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華声在線には「
韓国海上警察官の刺殺=中国漁民だけの問題か」という投稿が掲載され、「在韓米軍が強姦事件を起こしてもちょっと処罰されるぐらいなのに、中国漁民にこれほど酷い扱いをするとは」「韓国に捕まってもすぐに中国側に身柄を引き渡す体制を作れ」と提言。
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法制晩報は「
我が漁民が韓国警察官を『刺殺』=証拠不十分だ」という、韓国警察なんぞ信用しない宣言。
■中国が逆ギレする理由とかわいそうな大統領
なぜ中国メディアが逆ギレしているのか。一つには違法操業の横行に韓国側の対応もエスカレートしており、催涙弾や閃光弾を使った取り締まりが「やりすぎじゃないか」と中国で報じられていたという伏線がある。第二に尖閣沖中国漁船衝突事故によって、「虐げられた弱き中国漁民を守れ」という風潮が生まれていることにあろう。付け加えるならば、韓国メディアのセンセーショナルな報道が反発心を招いたという側面もありそうだ。
中国と韓国の排他的経済水域(EEZ)境界線はいまだ確定していないため、早急に根本的な解決を目指すことは困難だ。いや、EEZが確定しても中国漁民は平気で不法操業に出撃し、中国外交部は「人道的な対応を」と繰り返すのかもしれないが……。
中国漁船は毎日、元気に違法操業しているため、いつまたこうした暴力事件、死亡事件が起きても不思議ではない。そのたびに中韓関係がきしみ、国内世論から突き上げられるとあっては、李明博政権としてもたまったものではないだろう。来月には中国訪問も予定されているが、違法操業問題についてなんらかの成果をあげないと韓国世論にバッシングされるのは必至。いやはや、大統領も大変である。
【韓国海洋警察官刺殺事件】
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