2011年12月14日、中国商務部は、排気量2500cc以上の米国製自動車に対して、反ダンピング税、反補助金税を課すと発表した。15日より適用される。
GM FUEL Cell Car at Siemens PLM / Siemens PLM Software
■調査、最終報告、そして課税
14日発表の中国商務部2011年第84号公告で、反ダンピング税、反補助金税の課税が発表された。期間は2年間。制裁税率は以下の通りとなる。
企業別反ダンピング税、反補助金税一覧
GM:反ダンピング税8.9%、反補助金税12.9%
クライスラー:反ダンピング税8.8%、反補助金税6.2%
メルセデスベンツ米国:反ダンピング税2.7%、反補助金税0%
BMW米国:反ダンピング税2%、反補助金税0%
米国ホンダ:反ダンピング税4.1%、反補助金税0%
フォード:反補助金税0%
その他米国企業:反ダンピング税21.5%、反補助金税12.9%
米3大メーカーのうち、フォードだけが難を逃れているのが不思議なところ。米国からの輸出がないからなのか、それとも別の事情があるからなのか。
■「なぜ今?」中国の意図
今回の制裁は突然決まったものではない。2009年より調査が始まり、今年5月にはダンピングの事実と中国メーカーへの被害が確認されたという内容の最終報告が発表されている。調査、報告、制裁発動と、粛々と手順を進めてきただけとも言えるが、やはり「なぜ今」という意図が気になるところだ。
ブルームバーグは、「米国による中国製タイヤへの関税を不服として世界貿易機関(WTO)に訴えたが、WTOは9月に中国の主張を退けた」とタイヤ問題に言及。
日経は「米商務省は今年11月、独太陽電池大手ソーラーワールドの米子会社の申し立てを受け、中国製太陽電池の反ダンピング調査を始めた。中国側は猛反発しており、この時期に米国製自動車への相殺課税を決めたのは米国に対抗する狙いがあるとの見方も出ている」と太陽電池問題について触れている。
NHKも同じく太陽電池問題を指摘している。
正直、「米中摩擦のタネ」は数が多すぎて、どれが引き金なのかと言われると皆目検討がつかないというのが正直なところ。タイヤにせよ、太陽光パネルにせよ、最近のトピックを紹介した程度の意味しかないのではないか。
最近、話題となった「摩擦のタネ」でいうと、むしろ米通商代表部(USTR)の年次報告書のほうがより中国で注目されていたような印象だ(
日経)。WTO加盟から10年という節目で、「中国は加盟時の約束をすべて守った」という自慢キャンペーンをはっているさなかに、USTRは「中国は国家資本主義的」「WTOルールが守られているとは言えない」と冷水を浴びせた。
■2009年の導火線
欧州債務危機が象徴的だが、2011年は「世界金融危機はまだ終わっていない」ことを強く印象づける1年となった。今回の反ダンピング税もリーマンショック翌年の2009年に調査が始まっているのが興味深い。
当時、米国は「バイアメリカン条項」やら自動車業界への巨額の政府支援が話題となり、保護主義の台頭が強く懸念されていた。中国も米国産鶏肉に反ダンピング税を課すなど米中貿易摩擦の懸念が高まっていた。実際、米国も居丈高に中国を批判できる身ではないようにも思うが。
今回の一件で再び米中貿易摩擦がクローズアップされることになるだろう。中国は自国企業にたっぷりと補助金を出しているうえに非関税障壁もわんさかある。叩けばいくらでもほこりが出る体だけに、米国が報復する「タネ」には事欠かないのだから。