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2011年12月15日
Chongqing Skyline / sanfamedia.com
中国内陸部の大都市「チョンキン」(重慶)。かつては四川省に属していたが、1997年に直轄市に昇格した。北京市、上海市、天津市と並ぶ4つの直轄市は、省と並ぶ位置にある。
重慶市の面積は北京市(四国ほど)を上回り、北海道ほどの広さを持ち、人口3200万人を抱える。ご存知のように、中国の県は市の下にあるが、重慶市も多くの県をかかえている。都市部中心の人口は550万人いる。
第2次大戦中は、日本軍による「重慶爆撃」で知られた。国民党が、内陸部のここに首都を移したためである。重慶爆撃は、次第に絨毯爆撃となったため、中国側から無差別爆撃と非難宣伝され、後の東京への米軍の無差別爆撃や、広島・長崎への非戦闘員への原爆投下の正当化、また東京裁判での戦犯の根拠とされたという。
■「西の上海」の新たな試み
過去はさておき、この中国内陸の大都市、「西の上海」とも呼ばれる重慶(チョンキン)で、都市と農村の経済格差を是正しつつ、この内陸部でも市場経済を成長させようという新しい試みが行われていると、上海のベンチャー・キャピタリストのエリック・リーは伝えている。
重慶市3200万人のうち、1200万人は都市部に住むが、2000万人は農村に住み、百姓、出稼ぎをやっており、都市部との経済格差は広がっている。これを是正することが急がれている。
The Night of Chongqing / marsbelle
■都市へ移り住む農民たち
2008年12月、重慶市には「重慶農村土地取引所」ができた。ここで「地票」と呼ばれる農村の不動産証券を売買することが可能になり、ここで得たキャッシュで都市部に開発された住宅に住めるようになったという。(中国の農民は、土地離れが平気なのだろうか?それとも同地域だから?)。
取引開始以来、15億ドル(約1170億円)にのぼる取引がなされ、200万人以上の農民が都市部に移ったという。
2012年までにさらに100万人、そして2020年までに移住農民の合計は700万人にまで達するとみられている。その結果、1200万人対2000人という都市対農村の人口比率は、1900万人対1300万人(都市化比率60%)と、大きく逆転するとみられる。
■中国版カーストとも呼ばれた戸籍制度の改定
これと同時に、都市部に暮らす農民を差別していた「戸口」(フコウ)と呼ばれる戸籍制度も変えられ、農村での住民家族にも、医療、教育が与えられるというのだ。
30年ぶりに大きく舵を切り替える中国の経済政策(チェンマイUpdate、2011年3月7日)
Chongqing, 2011 / IHA Central Office
■民間ノン・バンクの隆盛
市場経済の活性化も進められている。重慶のGDPは、2007年当時で民間セクターが生み出した分は25%に過ぎなかった。75%は政府と国有企業によるものだった。それが現在では、民間セクターが60%を占めるまでになってきた。
民間の中小企業の発展を推し進めるのは、重慶市で政府公認の数百にのぼる民間ノン・バンクだそうだ。今年だけでも、ノン・バンクからの中小企業融資は、150億ドル(約1兆1700億円)に達する。
■「hp」「フォックスコン」沸き立つ電子部品組み立て産業
沿海部がロー・エンドの低賃金組立産業で伸びてきたのに対し、重慶は電子部品などの高付加価値製品の下流組立工程をねらう。ヒューレット・パッカード(hp)やフォックスコン(台湾の電子機器受託生産の世界最大手)が、進出しており、コンピュータやタブレットPCは2015年までに、世界最大級の年1億台が重慶で生産されると見込まれる。外国直接投資は、2007年12億ドル(約937億円)だったが、2011年の1~9月には90億ドル(約7027億円)にまで達した。
中国の経済発展は、1978年のデン・シャオピン(鄧小平)の開放路線の採用から、80年の5つの経済特区開設を第1期、1992年の鄧小平の「南巡」をきっかけとする上海経済興隆を第2期とすれば、重慶の経済格差の解消実験は、第3期となるかもしれないと、エリック・リーは見ている。
Chongqing_2011 05 26_023 / HBarrison
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*当記事は2011年12月12日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。