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2011年12月15日
*2011年11月の海洋警察と中国漁船の争いの模様。抵抗する中国漁船員と海洋警察。西祠胡同の報道。
2011年12月12日、韓国の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業していた中国人漁民が、逮捕の際に抵抗し、海洋警察官1名を刺殺した事件が起きています。
(関連記事:中国漁船船長、韓国海洋警察官を殺害=黄海の「漁業戦争」)
事件後、中国官制メディア・環球時報様は社説で取り上げていますが、「刺殺」とかっこ書きにしている事からもわかるように、中国はまだどう事件を収束させるか、その方向性を決定していません。
■中国外交部は謝罪せず
・社説「韓国はいじめを許さないという証明必要ない」(環球時報、2011年12月14日)
中国外交部は謝罪していませんが、環球時報社説が述べているように、「事件の調査は終わっていない(どんな事件かまだ分からない)」というのが現時点での中国のスタンス。ですから謝罪の言葉など出てくるはずがありません。
また、漁業問題は今に始まった話ではないとして、日露間の「漁業戦争」がたびたび起きていること、日本や韓国も中国のEEZを侵犯したことがあるなどと述べています。ちなみに中国人漁民による「韓国EEZ」侵犯についても、かっこ書きの記載です。つまり、韓国側の主張を伝えているというふりであり、本当に侵犯したかどうか中国側の判断は留保している書き方です。
こうしたあいまいな対応は、事件が中央経済工作会議開催中に起こったため、最高意思決定機関である政治局常務委員が会議から離れられずに決定が出せないという事情とも関係しているでしょう。「韓国警備隊員の死傷事件について遺憾に思う」という硬直した表現が現時点での公式見解なのですが、中央経済工作会議が14日に終了した後、対応がどう変化するのかを注視したいと思います。
■社説 「韓国人より貧しい中国漁民に礼儀を要求できるのか?」
さて、政治的状況は上述のとおりなのですが、それにしても環球時報の社説はひどいですね。
中国は韓国より強大な国であり、GDPも数倍大きい。だが、1人当たりGDPは韓国人の約1/5しかない。中国人は韓国人より貧しく、平均的な教育水準も韓国ほど高くはない。外交官と同じような礼節を中国漁民に要求することは、韓国警察と衝突の中で礼儀を要求することは現実的だろうか?
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