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2011年12月17日
2011年12月13日付けRFAチベット語版によれば、今月12月8日、インドへの亡命目的でチベットからネパール国境を越えた5人のチベット人がネパールの国境警備隊に拘束され、その後中国側の国境警備隊に引き渡されたという。
目撃者の証言によれば、5人の内訳は男性3人、女性2人、いずれも30~40歳位だったという。彼らはネパールのムスタン地区からネパール側に入り、そこで拘束された。国境警備隊は彼らをカトマンドゥに送らず、すぐに中国国境警備隊を呼んだ。そして中国側のトラックがネパールの国境を越えネパール領に入り、彼らを連れ去ったという。彼らの氏名、出身地等は分っていない。
*チベット人亡命路の一つナンパラ峠(5740m)。
■中国の要請により強化された国境警備
ネパールは中国の要請に従い、越境するチベット人の警備を強化している。今年に入り何度もチベット人が国境付近で拘束され、カトマンドゥに送られた。しかし、カトマンドゥの出入国管理事務所に送られた後には国連や人権団体の働きかけにより、今までは中国に引き渡されることなく国連を介し、チベット亡命政府が運営する難民一時収容所に無事送られている。
しかし、実際には今回のケースのように秘密裏に中国側に手渡されているチベット人も少ないくないといわれる。。中国側はこうしてチベット人を手渡した国境警備隊に報償金を与えているという情報もある。
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■越境をもくろんだ人間への刑罰、長期の懲役刑も
RFAによれば、分っているだけでも、今年に入り12歳の男の子、7歳の女の子2人、それにタシと呼ばれる男性が中国側に引き渡されたという。もちろんネパール国境を越える前に中国側で拘束されるチベット人も多い。中国は最近こうして亡命目的で越境しようとしたチベット人に対する刑罰を強化し、長期の懲役刑を与えているともいう。
ムスタンは長い間独立した王国であった。チベットとの交易も盛んであった。1959年に法王が亡命した後、最後まで中国と戦ったチベット人ゲリラの基地があった地域としても有名である。以下のビデオはすでにこのブログでも紹介済みであるが、このビデオにはムスタンが如何に中国側に取り込められようとしているかも描かれている。
近い将来、この国境を越えラサと結ばれる立派な道路が、中国の援助により建設される予定になっている。この国境は1999年の年末に、ギャワ・カルマパが越境した場所でもある。それ以来いっそう警備が厳しくなったという。ビデオの中、33分過ぎから36分に掛けて、今回チベット人たちが中国側に引き渡されたと思われる国境付近の映像を見る事ができる。
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*当記事は2011年12月15日付ブログ「チベットNOW@ルンタ」の許可を得て転載したものです。