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マニア感涙の旧車が走るミャンマーと突然の「ポンコツ車買い替え」狂騒曲(ucci-h)

2011年12月17日

■ビルマの「ぽんこつ車買い替えプログラム」狂想曲■

*当記事は2011年12月12日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


20111217_マツダ_B600
*マツダB600。画像はКлуб MX3-CLUBより。

東南アジアでは日本と違って、走行距離20万キロ、30万キロの古いクルマが当たり前に走っている。新車は高い買い物なので、中古車の売買が主流だ。ときに、これは……と目を見張る60年代とおぼしき「クラシック・カー」も路上でお眼にかかれる。

「人間の年齢と一緒で、20(万キロ)代、30(万キロ)代はまだ若い。働き盛りだ」

と、北タイでは冗談が出る。


■まるでキューバ!ビルマを走る数十年前の日本車たち


開放路線の進み始めたビルマの車の状況はもっとひどい。道路もひどいが……。ビルマでは、過去20年の西側による経済制裁が響いて、キューバのように相当古い車が走っている。米国車が走るキューバとは異なり、こちらはおもに30~40年前の日本車などが街を走る。60年代に日本から輸出された車歴半世紀近くのマツダB-600(かつてのマツダB-360のボアアップ車)が、いまだタクシーに使われているのだ。

20111216_マツダ_B360
*マツダB360。


■米「ポンコツ車買い換えプログラム」の採用


ビルマの開放路線に沿って、古い車の新しい車への切り替えが企てられた。2011年9月19日にスタートしたこの新しいプログラムは、2009年7~8月にアメリカで行なわれた「Cash for Clunkers」(ポンコツ車買い換え)プログラムの採用である。

アメリカでは、排ガス規制以前のたいへん古い車を米国陸運局に差し入れさせ(具体的には新車を買うことを条件に、バウチャーを発行)、これにより燃費のいい新車への買い替えを促進させたものだ。古い車を差し入れると、1台2000ドル(約15万6000円)ほどの新車購入時のリベートを受けられるバウチャーがもらえたという。

ビルマの場合は、アメリカと違い25年以上に古い車だ。まず「40歳」以上の最も古い車から買い替えを促進する。これをトレード・インして、1995年以降登録の「新車」の輸入許可証がもらえるというものだ(ビルマ国内には、そんなに新車はないから)。ビルマの場合、輸入許可証にバウチャーも付いているとは伝えられていないので、購入時のリベートはないのだろう。

このためビルマでは、まず輸入許可証がもらえるぽんこつ車(失礼!大中古車と呼びましょう)への需要が高まった。おかげでタクシー・ドライバーは、車のオーナーから輸入許可証を手に入れるため、車を取り上げられ(運転手の所有ではない)、失業状態だという。

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*2009年3月、ビルマ(ミャンマー)にて。



■そして始まった「ポンコツ車」投機!


このプログラムのために、大中古車を持っていない人まで利潤を狙ってポンコツ車を買い、政府に差し出して、「比較的新車」の輸入許可証を手に入れ、これを転売する状況となってしまったようだ。これが蔓延すると投機リスクを招くようになるだろうが……。

このため、今度は比較的新しい車(ニッサン・スーパー・サルーンなど)の中古車市場が値下がりをみせた。といっても、ショウルームに新しい車は少ないし、そう簡単に輸入増になるわけでもない。そのため、再びニッサン車などは値段を戻したり、より高くなったりと、一種の狂想曲を奏でている。

おかげで、ポンコツ車修理工場の仕事がなくなったり、国産のジープが割高になり、売れない状況にもなってしまっている。。


■買い替えは促進されているようだが……


11月18日現在で、30年以上の大中古車の差し出しは、1万6566台にのぼる。ビルマの道路には、8月現在37万台の登録済みの車が走っており、うち5万4174台(15%)が、20年以上前の車だといわれる。40年以上が1万台、30~40年が8000台以上といわれるから、買い替えは促進されてはいるようだ。

アメリカの中古車買い替え促進プログラムは、わずか1ヶ月間で69万台の中古車が差し入れられ、予算30億ドル(約2340億円)を使い切り終了した。1台あたり平均数千ドルのバウチャーが付いたといわれる。ビルマの場合は、詳細がわからず、また規則も変化していきそうだが、車の絶対数が少ないし、リベート付きのバウチャーもなさそうなので政府の負担は小さいだろうが、今後どう展開していくのだろう?

ビルマの輸入車には通常165%の関税がかかる。なので、5000ドル(約38万9000円)ほどの比較的新しい車も、ショウルームでは1万3250ドル(約103万円)ほどになる。さらに輸入許可証を有料で手に入れたとしたら、新しい車は手に入っても、相当な出費がかさむこととなる。日本の輸出向け中古車オークションでも、ビルマ向け中古車の金額は上昇傾向にある。

20111216_ビルマ_ミャンマー_国産車
*ビルマの国産車。中身は中国製。


いずれはビルマの自動車輸入も自由化されて、軍関係だけに与えられる輸入許可証などは簡略化されるのだろうが、まだまだ動き出したばかりだ。これから日本では、ビルマに中古車の輸出を増やそうという業者が増えると思われる。ビルマが車の輸入を増やしていけば、通貨チャット上昇の歯止めにもなるかもしれない。

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*当記事は2011年12月12日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。

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