中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月17日
Tesco Price Cut / Craig Murphy
*英大型スーパーチェーン『TESCO』。
タイでは、イギリス系の「テスコ・ロータス」、フランス系の「ビッグC」(カルフールの店舗も買収)、さらにオランダ系の「マクロ」と、外資系の大型量販店チェーンが、豊かな商品を競って提供してくれている。ビッグCの「C」はもともとは国内資本「セントラル・グループ」の「C」だったが、いまはみな外資系である。
■頓挫したインド小売市場への外資導入
人口大国インドでは、小売業に外国資本を導入し、近代化を図ろうとしたが、国内の反対に遭い、機が熟するまではサスペンド(スタンバイ、待ちの状態)となった。
国内の景気低迷、2桁の物価高への対策もあって、マンモハン・シン政権は2011年11月24日の閣議で外資導入を了承した。しかし、議会での採決もなかったことから、野党や小売業者、組合、さらには連立政党「草の根会議派」からも反対の声が上がり、2週間後の12月7日には、この計画はサスペンドとなった。
マンモハン・シン国民会議派内閣は成立後7年を経たが、経済不振や汚職スキャンダルで揺れており、求心力を失っている。
Manmohan Singh - India Economic Summit 2009 / World Economic Forum
■いまだ小売店の多くが小規模自営業者
インド12億人の小売市場の規模は、現在4700億ドル(36兆6000億円)と言われるが、大型店の占めるシェアは6~7%で、小売店の多くが「パパ・ママ・ストア」(家族構成の小規模自営小売店)である。
ここに、ウォールマート(米)やテスコ(英)、カルフール(仏)、セントラル(タイ)等の外資が51%株式を持てるスーパー・チェーンを導入することにより、流通の近代化を図ろうという、いわばもっともな政策なのだが、そのまずいやり方が、後進的な既存勢力につぶされた形だ。大型店に加えて外資ということで、国内の反対派に火をつけてしまった。
India-0270 / archer10 (Dennis)
ここまで、外資には卸売業のジョイント・ベンチャーのみ許されてきた。近代的なスーパー・チェーンをインドに入れることによって、新しい良品が外国から入ってくることだけでなく、国内の流通も改善されると政府は目論んでいる。
インドは道路が悪く、コールド・チェーンが整っていないために、生鮮野菜・果物の40%が運送途中に腐ってしまうといわれる。インフレ抑制効果も含めて、外資導入は流通近代化が求められるインド消費市場へのインパクトは大きいはずである。
India-5235 / archer10 (Dennis)
■提示した外資系チェーン導入条件
外資系チェーンの導入には、いろいろな条件が付されたが、その効果は今回発揮されなかった。
(1)資本は51%まで。
(2)商品調達の30%は、国内の中小企業から行なう。
(3)人口100万人以上の都市への出店に限る。