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2人殺害の爆破事件犯人を逮捕=完璧な現金輸送車襲撃計画を狂わした誤算―中国

2011年12月17日

2011年12月16日、武漢市警察は、今月1日の銀行前爆破事件の犯人・王海剣を逮捕したと発表した。


20111217_写真_中国_殺人犯_現金輸送車強奪
*画像は武漢晩報の報道

■銀行“前”爆破事件と大捜索

2011年12月1日、湖北省武漢市洪山区雄蘇大街建設銀行の店舗前で爆発事件が発生。2人が死亡、15人が負傷する大惨事となった。爆発が起きた時間に現金輸送車が通りかかっていたが、爆発に巻き込まれることはなかったたため、テロなのか、それとも金目当ての犯行なのか、その動機にも注目されていた。

警察は重大事件として捜査する方針を決定。中国公安部から派遣された刑事、爆発物専門家が指揮を執り、事件の捜査を進めていた。監視カメラに残されていた現場から逃げ出す白ヘルメット、白いバイクの男が最有力容疑者と判断された。懸賞金によって市民から集められた情報と照らし合わせる作業を進め、4日には容疑者・王海剣の名前を特定するにいたっていた。

ところがそこからが長かった。警察のしらみつぶしの捜索が続くも、王の行方が見つからない。検問から逃げ出した男を「王海剣、発見!」とカーチェイスの上逮捕してみたら、別人だったという一幕もあった(レコードチャイナ)。

そんな大騒ぎが突然終わりを告げたのは15日のこと。広州軍区武漢総委員に努めている看護師、研修看護師が、点滴を打ちに来た患者の一人が王そっくりだと気づいたのだ。病院はただちに警察に通報。私服警官10人が駆けつけ、王を逮捕した。逮捕時には爆弾、雷管5個、爆破用リモコンを所持していたという。


■苦学生から出稼ぎ農民、そして経営者に=殺人犯・王海剣

王海剣は湖北省襄陽市棗陽市出身の24歳。農村出身の苦学生だったが、ともかくまじめだったという。棗陽市技術工業学校電子電工専攻を卒業したが、家電修理の腕前は同級生の中でもピカイチだったと当時の教師は振り返っている。

2005年に卒業後、広東省で出稼ぎして金を貯めた後、2008年からは武漢市で家電修理店を開いていた。月に1万元(約12万円)を稼ぐちょっとした経営者ぶりで、村に帰るとご近所の家電を無料で修理してあげるなど、やたらと気前がよくなったと故郷の村人たちは話している。

王の運命が変わったのは2010年からのこと。「家電修理じゃ儲からない。今度はペンキ屋を始めるわ」とよく知らない商売に手を出したのが運の尽きで、商売はうまくいかなくなってしまったという。その穴を埋め合わせようとしたのか、株にも手を出して失敗してしまった。

こうして失敗続きの王は手っ取り早く金を奪おうと犯罪に手を染めるのだった。早くも今年6月には爆破実験を実施している。その時も負傷して、1週間入院した。


■たった一つの誤算

動機が取りざたされた銀行“前”爆破事件だが、やはり現金輸送車を狙ったものだという。現金輸送車の停車位置を確かめ、そこに爆弾をセット。爆弾の上にはセメントがかぶしてあり、爆破後は煙幕のような煙が立ちこめる。その隙に輸送車の金を奪うというのが計画だった。

爆弾の製造、遠隔爆破装置、煙幕と王の作った犯行道具は予定通りの効果を発揮したが、一つだけ誤算があった。犯行当日、いつもなら現金輸送車が停車する位置に違法駐車している乗用車(トヨタ・カムリ)があったのだ。仕方なく、輸送車はいつもと違うところに停車。爆発は関係のない人を殺し、負傷させただけで、金にはならなかった。

その爆発で、王自体も負傷してしまい、病院に行く羽目になった。そこで逮捕されたのだから、自業自得というべきか、とことん運が去っていたというべきか。ちなみに事件後2週間以上も武漢市にとどまっていた理由について、王は「最も危険なところが最も安全だと思った」と話している。


■罪の意識がない犯人

王の両親は親孝行の息子がなぜこんな犯罪をしでかしたのか、いまだに理解できないという。商売も立派に成功していたのになんで現金輸送車を襲う必要があるのか、と。実際、株ですったとはいえ、王の口座にはまだ数万元の預金が残っていたという。

15日夜に逮捕された王は取り調べ中に「腹が減った」と出前を要求するなど、無関係の人間を殺害した罪の意識はないようだ。5元(約60円)の麻婆豆腐をパクついていたと報じられている。まじめで親孝行な苦学生にして、ビジネスも成功させた賢い青年には倫理観というものが完全に欠如していたのだろうか。

しばらく中国紙紙面を騒がすニュースとなりそうだ。

・参照記事
武漢晩報(2011年12月17日)、法制晩報(2011年12月17日)


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