■南の島に雪が降り、地震が起き、政争が起こる■
*当記事は2011年12月17日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。
■クイズです
クイズです。この国はどこでしょう?
(1)ほぼ赤道直下の南の島なのに4500mの山(ウイルヘルム山)があり、雪が降る。
DSC_0253 / Ian @ ThePaperboy.com
(2)太平洋戦争の一大戦地であり、「さらばラバウルよ」と歌われたラバウルのあるニュー・ブリテン島が東側にある(ここも領土)。
(3)三大トロピカル・フラワーのひとつブーゲンビリアに名を残す、フランスの探検家ブーゲンビルが発見した島のブーゲンビル銅山は、世界有数の銅鉱山であった(今は独立も含め抗争中)。
(4)この銅の島の上空で、1943年日本軍の山本五十六提督の搭乗機が打ち落とされた。
(5)5.46万平方kmという日本より広い国土に700万人ほどが住む。首都の名はポート・モレスビー。
答えは……
1975年に独立したPNG(パプア・ニューギニア)です。オーストラリアからは目と鼻の先、300kmしか離れていません。
■首相不在時に起きた政変このパプア・ニューギニアに今、独立以来の揉め事が起こっている。この国は1975年の独立以来、マイケル・ソマレ首相(75)が、つごう20年にわたり国民同盟党(NAP)の党首として国を引っ張ってきた。まさに「国の父」だった。
Oslo Climate and Forest Conference 2010 / Statsministerens kontor
*真ん中の渋さ満点の御仁がマイケル・ソマレ元首相。(水島)
しかし、ソマレ首相は高齢で、今年2011年3月に心臓手術を受け、4月以降はシンガポールの病院で入院加療を受けていた。この不在中の8月、野党と与党の一部が合意し、野党の人民国民会議党(PNC)のピ-ター・オニール(46)を首相に選任した。
■戻ってきたマイケル・ソマレ元首相と、もう一人の「マイケル」
追い出されたソマレはファイト・バック。2011年12月12日、オニールの選出は憲法違反であり、自身が正当な首相であるという裁決を最高裁で引き出した。
PNGはイギリスの連邦加盟国であり、英女王の名代の総督がいる。総督は議会で選出されるので、首相よりも権限がないように見えるが、そこは女王陛下の名代である。現在の9代目総督には、今年2011年1月選任された人民民主行動党(PDM)のリーダーだった、マイケル・オギオ(69)がいる。
ソマレは最高裁裁決の翌々日の12月14日、同名のマイケル総督に首相への任命をしてもらう。この日にちょうどマグニチュード7.1の大地震がパプア・ニューギニア島を揺らした。
これで駄目押しかと思うとそうはいかない。その夜、議会では、今度はこのマイケル・オギオ総督が罷免され、代わりに議会議長のジェフリー・ネイプにとって代わられる(議会の議長が総督になることは過去にもあった)。
もともと、総督が自分の意志で首相を任命する権限はないわけだが、マイケル総督がマイケル首相の肩をもったのだろう。こうして、銅と金と天然ガス資源に恵まれ、権益争いのきつい島国は、独立以来の混乱に陥った。
DSC_0284 / Ian @ ThePaperboy.com
■80%の失業率、既得権益、変革を求める国民
しかしおそらく国民は、過去20年以上続き、既得特権を保守したいソマレ政権に終止符を打ち、新しい世代に代わってもらいたいところなのだろう。ちょうど、エクソン・モービルが150億豪ドル(約1兆1600億円)を投じて、天然ガスプラントを開発するところだ。豊かな資源があるにもかかわらず、現状、国民の失業率は80%にものぼるといわれる。
赤道直下の南の島には、雪も降るし、地震も起こるし、不可思議な政争が展開される。
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