中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月23日
earthquake 地震 / whaleforset
ちなみに掲載は中国新聞週刊。ばりばりの官制メディアだが、体制批判的な亡命ジャーナリストの記事を掲載しても許されるとは、なんだか不思議である。以下、抄訳でご紹介する。
■死刑囚から奪われた臓器
中国には2つの「きわめて汚い産業」が存在する。それは人身売買と臓器売買だ。前者は古い歴史を持ち、底辺階層の集団的犯罪であった。ところが近年、官僚が赤ちゃんの売買に参与していたという醜聞が明らかとなった。湖南省邵陽市では一人っ子政策違反の赤ちゃんを誘拐し、外国人に養子として売り飛ばしていたのだ。子どもたちは市の名前から「邵」という名字を与えられていた。
臓器売買はというと、当初は刑務所と医療機関が関わる「経済活動」としてスタートした。自由意思のない囚人たちが臓器提供者とされたのだ。すでに文化大革命時期には囚人による臓器提供は始まっていたという。反革命罪で捕らわれた李九蓮は殺された後、腎臓を摘出された。噂によると、ある高官の息子が腎臓病を患っていたのだという。『出身論』の著者である思想家にして、死刑を宣告された政治犯・遇羅克は隔膜を奪われた。遇の妹は、隔膜は北京市の模範労働者に与えられたと話している。
改革開放後、移植手術件数は増えていったが、ドナーの数は増えなかった。そこで臓器提供の供給源はやはり囚人たちとなった。臓器移植大国・中国からなぜ移植関係の論文が国際的学術誌に発表されないのか。その理由は臓器がどこから提供されたのか、明らかにできないことが原因だった。
■医学会の要望で死刑囚から臓器売買ビジネスへと転換
この秘密が明かされたのは2005年11月にマニラで開催された世界保健機関(WHO)の支部会でのこと。中国衛生部の黄潔夫副部長は「中国で実施されている臓器移植のうち、生者からの移植はわずか5%。残る95%は死者からの移植だが、そのほとんどが死刑囚のものである」と認めた。
研究を発表し世界の医学会から認められたいという中国医学会の要請もあり、中国は「国際的に認められた合法的ルートでの臓器提供」への切り替えを目指すことになる。しかし、ある調査によると、2003年から2009年までに死後臓器を提供したドナーは130人だけ。かくして、臓器提供業界という血にまみれたビジネスが誕生する。
■「人間」の値段
資源の少ない中国だが、唯一豊富なのが人間という名の資源だ。豊富すぎるあまりに人身売買、売買春、そして臓器売買というビジネスを生み出してきた。政府系NGOのレポート『中国婦女誘拐の現状』によると、成人女性の取引価格は6000~2万元(約7万2000~24万円)。男の赤ちゃんで2~4万元(約24~48万円)、女の赤ちゃんで8000~2万元(約9万6000~24万円)。売買春ならば300元(約3600円)から数千元が相場となる。
前二者と比べて、新たなビジネスである臓器売買は圧倒的に巨大な利益を生み出す。肝臓ならば15万元(約180万円)が相場だ。ただし金のほとんどは仲介業者の懐に入り、「自発的に」臓器を売った提供者はたった2万5000元(約30万円)しかもらえない。違法な臓器売買ビジネスでは移植手術後のケアなどないが、あったとしても2万5000元の報酬では治療費すら支払えない。
■「臓器を奪う殺人事件」という都市伝説が広がるわけ
先日、湖北省武漢市で女子大生が殺害され、腎臓を奪われたというデマが広がった。
(関連記事:女子大生が殺害された、腎臓が盗まれていた?!都市伝説大国・中国)
なぜこんなデマを信じる人が多いのだろうか。理由は簡単だ。もし無菌室や適合性の確認、手術前の処置といった制限がなければ、この中国という法も正義もない社会ならば、無辜の民を殺して臓器を奪う事件が本当に起きることは間違いないからだ。
関連記事:
中国人死刑囚の臓器が売られている!韓国で違法仲介業者を摘発
借金返済に腎臓売却=中国臓器売買の闇―翻訳者のつぶやき
「高給の仕事見つけたよ!→腎臓消失」」「iPadが欲しいから腎臓売った」中国の臓器売買ビジネス
約85万円という驚きの安さ=タイ初の臓器移植手術成功―タイ・ニュース
【写真】女性死刑囚の「最後の夜」=笑顔と命のはかなさ―中国(凜)
今回の記事、「臓器摘出」もしくは「臓器提供」の部分が「臓器的強」になっています。