中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月21日
*土豆網、テレビ東京特設ページ。
■今までのおさらい
11月、テレビ東京の「決断」が中国コンテンツ業界の話題をさらった。「NARUTO」をはじめとする人気アニメを中国動画共有サイト・で配信すると発表したのだ。日本で放送された1時間後に最新回が公開されるばかりか、過去のアーカイブまですべて公開される。しかも無料だ。中国のテレビでは基本的に新作日本アニメが公開できない状態が続いている中、新たな日本アニメファンの創出に期待を持たせる「決断」だ。
そして12月15日、土豆網は中国動画最大手・優酷網の著作権侵害を記者会見で訴え、政府関係機関に是正を求める書簡を送った。近年、中国の動画配信サイトでは正規版権獲得競争が続いていたが、今まで問題となったのは主に中国本土で制作された作品だった。今回は台湾のバラエティ番組「康煕来了」が火種となり、海外コンテンツを戦場として新たな戦いが勃発した格好だ。優酷網側も同社が権利を持つ韓流コンテンツを、土豆網が不正配信していると反論している。
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■「版権大戦」にテレ東参戦
今回のバトルを中国メディアは「版権大戦」とも呼んでいるが、土豆網に権利を提供したテレビ東京も参戦した。12月21日付で優酷網及びそのスポンサーに警告の書簡を送っている。スポンサーにまで書簡を送っているのが憎いところ。
優酷網ユーザーの年齢層、階層を反映しているのか、ファーストフードやソフトドリンクのCMがメインという印象だ。中でも多いのがケンタッキーのCM。米資本の大企業が「海賊版コンテンツで商品を宣伝していて恥ずかしくないのか」というメッセージにどう応えるのか、楽しみである。
■ワーナー、江蘇テレビも優酷網を攻撃
テレビ東京参戦と時間的には前後するのだが、ワーナー、江蘇テレビも「版権大戦」に参戦している。
まずワーナーだが、同社が権利を持つ人気中国映画「非誠勿擾2」(狙った恋の落とし方2)の海賊版が優酷網で公開されていたとして提訴していた。12月19日に一審判決が下り、ワーナーが勝訴。優酷網は賠償金18万元(約216万円)と裁判費用1万元(約12万円)を支払った(京華時報)。
江蘇テレビは2010年初頭、人気お見合いバラエティ「非誠勿擾」(ワーナーの映画と同じタイトルだが中身は別物)のネット放映権を優酷網に提供したが、優酷網側は契約を破り、番組内のCMを勝手に自社スポンサーの広告に差し替えていたという。問題発覚後、江蘇テレビは契約を破棄したが、優酷網は何食わぬ顔で海賊版の更新を続けていた。政府当局に対応を依頼したため、優酷網はしぶしぶ番組を削除したが、江蘇テレビは深刻な被害を被ったとして告訴の手続きを進めているという。
■海賊版王国の変化
「中国=海賊版王国」という大枠そのものは変わらないが、その内側は次第次第に変化しつつある。かつてはP2Pサービスを介しての海賊版視聴が主力だったが、現在ではよりお手軽な動画共有サイト、インターネットテレビが優勢な印象だ。
その動画共有サイトでも、海賊版から正規版へという動きが進んでいる。もちろん正規版権を獲得している一方で海賊版も大量に公開している上に、版権料もたいした金にはならないというのが現状である。ワーナーの「非誠勿擾2」がたった18万元の賠償金しか取れなかったことはその証左と言えよう。
しかし、中国にコンテンツホルダーにお金を支払うという風潮が生まれつつあることはもっと注目してもいいのではないだろうか。テレビ東京と土豆網の契約は2年間とのこと。今回の「版権大戦」の結果によっては、契約更新を目指す土豆網と版権奪取を狙う優酷網、そして第三勢力をも交えて、権利獲得を目指して札束で殴り合う本当の意味での「版権獲得大戦」が繰り広げられるかもしれない。
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