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2011年12月23日
Great Leader and Dear Leader 위대한지도자 경애하는지도자 / skinnylawyer
金正日総書記が2011年12月17日に死亡したというニュースが19日に世界を駆け巡りました。
韓国紙・中央日報は、17日時点で北朝鮮はこの情報を中国に伝えていたと報じています。この報道は果たして事実なのでしょうか。私自身はその可能性は余り高くないと見ています。
■中央政治局常務委員の動向
私が気になったのは、中共中央政治局常務委員の動向です。中朝は「血で打ち固められた関係」であり、中国にとって安全保障上極めて重要な位置にあります。もし「朝鮮の最高指導者が死んだ」ことが17日にわかっていたならば、対応できるよう常務委員9人全員が北京に残っていたはずです。
しかし、実際には温家宝・国務院総理が18日、19日と江蘇省を視察しています。このスケジュールがたたったのでしょうか。胡錦濤主席が20日に在北京北朝鮮大使館を弔問した際、随行したのは呉邦国全人代常務委委員長、李長春常務委員、習近平副主席のみ。温家宝総理は同行しませんでした。
■感じる「中共のあわてぶり」
その代わり、翌21日、温首相は賈慶林・全国政協主席、李克強副総理、賀国強・中央紀律検査委書記、周永康・中央政法委書記ら残る常務委員を引き連れて弔問しています。2回に分けての弔問に不自然さを感じました。
温首相は19日に一報を聞いて、視察を早々切り上げ北京にとんぼ返り。21日に弔問したこと。習近平副主席は20日から東南アジア歴訪を控えているため、常務委員勢ぞろいでは弔問できなかったことなどが想像できてしまいます。つまりは「中共のあわてぶり」が少々感じられてしまうのです。
■徹底した報道管制
中国外交部ですが、死去公表当日の19日こそ弔意を示しましたが、その後は徹底した管制を敷き、コメントしていません。外交部ウェブサイトの定例記者会見情報を見ると内容はすかすかで、20日や21日はほとんど会見していないにも等しい内容です。
なお、20日定例記者会見発表は、冒頭に「劉為民報道官は朝鮮情勢や中朝関係に関する中国側の見解を説明するとともにそのほかの質問に答えた」と書いてあるのですが、北朝鮮関連についてのコメントは掲載されていません。質疑はあったものの、公開は差し控えたということでしょう。21日の会見についても推して知るべきです。
■「考え中」の時間稼ぎでは?
これらの点を考えると、17日時点で中国が金正日死去の情報を得ていたとは考えにくいように思います。中国外交部の動きからは、「まず弔意を示しておいて、方針が決まるまでは報道管制」という意図を感じます。「考え中」ということでしょうか。
もちろん、真相は関係者にしかわからないのでしょうが。「考え中」の中国がどのような方針を固めるのか。今後の注目点です。
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*当記事は2011年12月22日付ブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。