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知られざる北朝鮮経済の実態=ステレオタイプの日本メディア報道(後編)(ucci-h)

2011年12月25日

■あまり報道されない北朝鮮の経済の話(下)■

*当記事は2011年12月24日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


Creche Near Wonsan
Creche Near Wonsan / David Stanley


「知られざる北朝鮮経済の実態」後編です。読んでいない方は前編からどうぞ。


■92年以降の急激な落ち込み

一人当たりのGDPでみると、92年以降の落ち込みが著しい。1991年にソ連が崩壊し、閉鎖国への援助の手がなくなってからだ。1974年ごろに一人当たり2850ドル(約22万2000円、現在のエジプトほど)まで伸びた北朝鮮のGDPは、その後20年近くチュチェ(主体思想、wiki)のもと停滞した後、1992年ごろより、現在に至るまで大きく落ち込んで行く。配給制度が不調をきたし、街に「コッチェビ(花燕)」と呼ばれる浮浪児が急増し始めたのが1994年頃からである。

現在は一人当たり1090ドル(約8万5000円)と、なんと1960年代頃までの水準に落ち込んでしまった。現在のカメルーンやコートジボワール、パキスタンやラオスのレベルである。ピーク時と比較すると、およそ6割もの減少を見せている。

PRK, Nepal 220
PRK, Nepal 220 / jensowagner



■国民の5人に1人が食料不足、子供の3人に1人が栄養失調


北朝鮮は西側の経済制裁もあり、中国から食糧支援を受け、計画経済の下、食糧配給を行なっていると言われるが(もちろん私的な小規模市場もあるようだが)、現在国民の5人に1人に当たる5百万人に食糧が足りないと、
2011年11月25日に発表された「FAO」(食糧農業機関)のレポートは伝えている。子供の3人に1人が栄養不足だそうだ。

5月から9月の夏の間の食糧配給は、1人1日当たり200g弱と、必要最小限の600gの3分の1だそうである。不足分は、草、どんぐり、松の実、野いちご、きのこ、花の根などで補っている。

北朝鮮は経済開放を進めなければ、これ以上援助でしか凌げない状況に来ている。しかし、アラブの国々のように下からのデモで国がひっくり返る可能性は、なくはないだろうが、今のところ非常に薄いだろう。国民の横のつながりがまだできていないようだ。

Local Boys
Local Boys / John Pavelka



■少数ながら存在する外資企業、経済開放の可能性


韓国国境からわずか16kmしか離れていない、かつての高麗の首都だったケソン(開城)には、グッド・ピープル社(下着メーカー)など韓国企業も活動している「ケソン工業団地」がある。そこにエジプトのカイロに本拠を持つ「オラスコム・テレコム」社の社屋もあり、モバイル電話サービスを提供している。そこでの携帯電話の契約者は、この6月末に、1年前の18万人から67万人に伸び始めたところだ。

注目されるのは、北朝鮮政府が中国にならって、いつどのように開放経済を取り入れるかだ。新しいリーダー、キム・ジョンウン(金正恩)は28歳と若く、最低1年は、政治的、軍事的基盤作りに追われるだろう。経済的開放をやるならそのあとになりそうだ。

経済開放をやるとすれば、かつて中国のデン・シャオピン(鄧小平)がやったように、経済特区の拡大など、市場経済の一部導入、外資の導入となるだろう。見本は世界中に散らばっているのだから、閉鎖志向を捨てて、開放経済に向かう考え方の変化が必要となる。はたして、若い指導者に知恵を与えられる人物が出てくるだろうか。


■悲劇的な経済政策の顛末、パク・ナムギーの処刑

北朝鮮の経済政策の変更については、悲劇がつきまとう。2010年3月、党の財政、経済計画トップのパク・ナムギー(朴南基)が、経済を意図的に悪化させようとした罪を問われ、逮捕され、76歳で銃殺された。パクのとった方策とは、通貨価値を切り下げ、国民預金の一部を差し押さえようというものだった。しかし、その後インフレを引き起こし、その失政を問われたという。


■ミャンマーをモデルケースに?待たれる「開放」の時


いずれは、開放路線に向かわざるを得ない北朝鮮だが、そのきっかけはどこで生まれてくるのだろうか。いっそビルマのように中国に丸抱えにされ、その体制への反発から経済開放へ向かう、という筋書きはどうだろうか。

ミャンマー開放路線、最大の目的は「中国からの脱却」=急がれる各国資本導入(ucci-h)

SINNKOKKI

それには少し時間がかかりそうだが、世界の変化はまた思ったより急激にやってくることもある。閉鎖国北朝鮮の「開放」が待たれる。

前編:
知られざる北朝鮮経済の実態=ステレオタイプの日本メディア報道(前編)(ucci-h)

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*当記事は2011年12月24日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


トラックバック一覧

  1. 1. ここは酷い稲城長沼迷宮ですね

    • [障害報告@webry]
    • 2011年12月26日 15:34
    • 稲城長沼と南多摩にスネーク 本設構造物と仮設構造物がつぎはぎw まずは稲城長沼駅 北側の改札から入ると川崎方面の仮設ホームから仮設跨線橋に そんで閉鎖された立川方面仮設ホームの一角から高架の下に その高架下の仮設の連絡通路をさんざん歩くと 本設の階段・EV

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