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飛行機ははたして「安全」になったのか?2011年、最も航空機事故が少ない年に(ucci-h)

2011年12月25日

■今年は、航空機の安全運航がベストの年になった■

*当記事は2011年12月25日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


JAL B747-446D (JA8907) & NTH Saab340B-WT (JA02HC) @ CTS/RJCC
JAL B747-446D (JA8907) & NTH Saab340B-WT (JA02HC) @ CTS/RJCC / Hyougushi


日本でひと月に3件も発生した航空機死亡事故

かつて飛行機は怖い乗り物だった。1966年の2月~3月のほぼ1ヶ月の間に、日本では重大な航空機事故が3つ続けに起こった。

(1)2月4日午後7時、千歳発の全日空機が羽田沖で墜落(死者133名)
(2)3月4日午後8時、カナダ太平洋航空のDC-8が羽田着陸失敗で炎上(死者64名)
(3)3月5日午後2時、BOAC機が富士山付近で乱気流に巻き込まれ空中分解(死者124名)


■アフリカでの恐怖体験、「先輩の死」、日航機墜落事故

1969年ごろ、あるアフリカの地方で飛行機に乗った時のこと。翼には白いペンキで、PAN AM(パンアメリカン航空)を消して、アフリカの航空会社の名前が書いてあった。パンナムからのお下がりの機体だろう。空港から滑走したのはいいが、飛び立つ前に途中で停止してしまった。広いアフリカの空港だったから良かったが、こんな経験は生まれて初めてだった。

1972年10月、モスクワ空港で日航機が離陸しそこなって墜落した。海外出張で搭乗していた会社の先輩2人が亡くなった。お一方とは、前の晩に八重洲口で歓送を兼ねて飲んだので、事故の翌朝、会社に行って亡くなったことを知った時は信じられなかった。

そのあと、自分も海外出張でドーバー海峡の上を飛んでいる時など、落ちないかとほんとうに怖かったものだ。

そして、1985年の日本航空国内線ジャンボ機123便の大事故。坂本九さんを含め、520人の方が亡くなった。飛行機はいったん落ちると多数の死者が出る、恐ろしい乗り物という認識が出来た。

日本航空123便墜落事故(Wikipedia)

運輸省航空事故調査委員会による事故調査報告書によると、乗員乗客524名のうち死亡者数は520名、生存者(負傷者)は4名であった。死者数は日本国内で発生した航空機事故では2011年12月の時点で最多であり、単独機の航空事故でも世界最多である


■減少傾向にある先進国の事故


しかし、ここ数年、先進国での重大な航空機時事故はだいぶ減ってきた。ここ数年で目立つのは、2011年9月にロシアのアイスホッケー選手を乗せたチャーター便が離陸直後に墜落(44名死亡)したのと、2009年6月にエールフランス機がブラジル沖で墜落(226名死亡)したくらいのものだ(ただし、アフリカを中心に開発途上国での事故はなお多い)。

日本では、90年代終わりごろから、民間定期航空の飛行機事故、ことに死者を伴う重大事故はずっと減少してきた。1994年の名古屋空港での中華航空墜落事故(264名死亡)、1996年6月の福岡空港でのガルーダ・インドネシア航空機の離陸失敗事故(3名死亡)を最後に、死者を伴う航空機事故は、幸い、なりを潜めてきた。

「IATA」(国際航空協会)が最近発表したデータによると、2011年は(11月まで)、航空機の安全実績については(事故件数と乗客死亡数)、過去最良の年になったという。

US Airways Flight 1549 Plane Crash Hudson in New York taken by Janis Krums on an iPhone
US Airways Flight 1549 Plane Crash Hudson in New York taken by Janis Krums on an iPhone / davidwatts1978



■290万分の1

西側諸国(主に欧米)製作の機体のロスについては、今年は290万運行回につき1件平均となった。昨年よりも49%も改善したそうだ。飛行機の場合は、離着陸時が危険で、飛び上がってしまえば問題は少ない。離着陸回数当りの方が、航続距離当りより重要な指標となる。

死者を伴う事故の件数も、今年は11月末までで22件、死者数は計486人と、昨年2010年同期の23件、786人を大幅に下回ってきた。2006年には、事故件数は20件だったが、死者は855人だった。

PSA 06-01596
PSA 06-01596 / San Diego Air & Space Museum Archives



■改善をみせないロシア、途上国での事故

ただし、ロシアでの飛行機事故は改善していないという。東側、西側すべて含めたジェット機、ターボプロップ機で見ると、46万運行回ごとに1件となり、昨年同期の36万運行回/1よりは改善してきているのだが。

ロシアや途上国を中心とする事故の原因は、進歩する機体に対して、パイロットや技術者がついていけないという人為的な問題に多くが起因する。これから成長するアジアでは、パイロットや技術者が不足すると見込まれているが、少し心配な問題である。
アエロフロート航空墜落事故(Wikipedia)

1953年以降に127件の人身死亡事故をアエロフロートは起こしており、6875名の犠牲者を出している。

Aeroflot Airbus A310
Aeroflot Airbus A310 / Deanster1983



■毎日乗っても事故にあう確率は438年に一度?

飛行機は、車よりよっぽど安全な乗り物だという。何をどう比較するかだ。毎日のように、頻繁に乗り降りするクルマと、時々、長距離を行く時に利用する飛行機とでは、比べ方が難しい。しかし、ディスカバリー・チャネルによると、 飛行機は運航回数当たりだと、毎日乗っても事故にあう確率は438年に一度だという。現在のように航空機の便数が増え、安全性が高まった今は、さらに数千年に一度の確率とでもなるのだろうか。

クルマに比べて、航行距離が圧倒的に長い航空機を、時間や距離当りでクルマに比べてもあまり意味がない。使用頻度当りで見ても、航空機のほうがずっと安全なことは間違いない。車の運転の場合は、狭い道や広い道を、スピード狂や、酔っ払いがたくさん走っているのだから……。


■拭えない人為的ミス

航空機の運航に関しても、限りはないだろうが、ヒューマン・エラーからフリーのシステムにいっそう近づけてほしいものだ。話は違うが、福島原発の事故の広がりの中で、初歩的な人為的ミスが2つもあったと分かり、がっくりした(復水ポンプを閉め冷却を止めて、メルトダウンを進めてしまったことと、おそまつな水位計を信じて間違った判断をしてしまったこと)。人間の見当違いとやり損ないは、やはりなかなか減らせないものなのだろうか。

Crash Turkish Airlines TK 1951
Crash Turkish Airlines TK 1951 / Radio Nederland Wereldomroep


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関連リンク:
2011年の航空事故は減少、IATA発表(AFPBB News、2011年12月17日)

*当記事は2011年12月25日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


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