中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月27日
*ロシアの定番正月映画『運命の皮肉』。
12月に入ってからロシアは近づきつつあるお正月(Новый год)一色です。日本で最初のお正月を迎えたとき、ロシアとのあまりにも大きな違いにカルチャーショックを受けました。日本のお正月は物静かで地味です。シャンパンにホームパーティーに花火に・・・とてもにぎやかで華やかに過ごしているロシアのお正月とはとても対照的でした。しかし、ロシアの大晦日は大騒ぎだけではない。
■大晦日は夢が叶う不思議な日
ロシアでは、大晦日の夜に不思議なことが起きたり、ずっと持ち続けた夢が叶ったりすると信じられています。そういうときの「夢」とはいわゆるサクセスストーリーの中に出てくるような「成功する夢」ではなく、もっと人間くさい「憧れ」や「恋」の話です。「憧れの人に会える」ことや「ずっと離れ離れになっていた人と再会できる」ことなどです。
このような夢の中でもとにかく実現する確率が低く奇跡に近いものほど、大晦日なら実現し得ると信じられています。それか、前から抱いていた「夢」ではなくまったく予想もしなかったような出来事が起きて、大きな幸運をもたらす。大晦日の夜ならそういうことが十分あり得ると、信じられています。「奇跡」や「不思議な出来事」はどちらかというとおとぎ話の世界ですけれども、ロシア人の心の中にある大晦日の雰囲気はまさにおとぎ話のような感じです。
■変化のきっかけとなる「奇跡」を待つ
ただ、大晦日をそのように考えていると言っても、カレンダー上の日付が変わったからといって人の人生がガラッと変わることはないと、誰でもわかっています。しかし、日本人でも新年の抱負を考えたり述べたりしているので、新年を一つの節目としてとらえるのは世界でもそう珍しいことではないと思います。そして、ロシア人は大晦日という節目そのものに注目して変化のきっかけとなるような「奇跡」を楽しみにしたりしているわけです。
... praying for deliverence / x-ray delta one
■お正月の定番映画『運命の皮肉』
お正月を題材にしたソ連・ロシアの映画も必ずといっていいぐらいこうした「大晦日ならではの不思議な出来事」がテーマとなります。例えば、ロシアのお正月の定番映画、『運命の皮肉』(Ирония судьбы、1975年)はまさにその典型です。大晦日にロシア式サウナ(Баня)で集まることが毎年の恒例行事となっている男性の仲間同士。
盛り上がりすぎて酔っ払ってしまい、挙句の果てに、男性のうちの一人が乗るはずのない飛行機に乗ってしまいます。その後、偶然が重なっていき、そこから様々なドラマが生まれます。この映画は感動も笑いもいい歌もたくさんあって、お決まりのハッピーエンドもありますので、ソ連のときからロシア国民に愛されている映画の一つです。
■想いはプーチンに届くのか!?映画『Ёлки』
そして、新しく出た映画『Ёлки』(2010年)もやはりこうした「大晦日ならではの奇跡」の伝統をそのまま受け継いでいます。ある児童擁護施設で暮らす女の子は自分の父親がプーチンだと、ウソをついてしまいました。彼女の言葉を信じる人は一人もいなくて「大みそか恒例の12時ジャストの大統領スピーチの中で、プーチンにある合言葉を喋ってもらうことができれば信じる」と言われてしまいました。
この女の子にひそかに思いを抱いている男の子が立ち上がりました。彼は、世界の人々が知り合いを通じてつながっていると信じて、女の子の願いを人から人へと伝えていけば必ずプーチンまで届くと考えました……。そして、男の子のとった行動で、プーチンまで願いが届いたのか、あるいは届かなかったのか!?というお話です。
■童心に戻れる特別な夜
昨今、普通ならあり得ないようなことでも大晦日の夜なら起こり得る、大人になっても心の奥にそういう夢を持ち続けているロシア人は案外(?)ロマンチストだと思います。そして、ロシア人たちのほとんどがお正月を好きなのは、一晩だけでも奇跡を信じる子供に戻れるからではないかと思います。
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関連リンク:
大晦日は“紅白歌合戦”か“運命の皮肉”か!? ロシア/モスクワ特派員ブログ(地球の歩き方、2009年12月31日)
*当記事はブログ「ロシア駐在日記」の許可を得て転載したものです。