中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月27日
*画像は羊城地鉄報の報道。
■中国で人助けが難しい理由
25日昼頃、広州市海珠区宝業路で一人の女性がめまいを起こして倒れた。周りの通行人たちは驚いて、救急車を呼ばねば云々と騒いでいた。
いやいや、とりあえず助け起こしてやれよと思われるかもしれないが、中国ではそのあたり、なかなか微妙な事情があるのである。きっかけとなったのは2006年に南京市で起きた彭宇事件。
バス停で転んだお婆さんを助け起こし、病院まで連れて行ってあげた好青年・彭宇くん。ところがお婆さんは彭宇くんが突き飛ばしたと主張。裁判の末、「優しく助けてあげたのはやましいところがあったからじゃね?」と彭宇くんに約4万6000元(約55万円)を支払うよう命じる一審判決が下った。
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その後も同様の「人助けしたら訴えられた事件」が相次いでおり、人助けは危険という風潮はかなり広く共有されている。今年10月には車にひかれた2歳の少女を10人以上の通行人が見て見ぬふり。揚げ句の果てには後からやってきた車にもう一度ひかれるという惨事があったが、これもたんに他人に無関心というだけでは片付けられない話ではないだろう。
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■ポルシェ少女見参
さて、話を25日に戻そう。「救急車呼ぶべ」「おら、関係ないだよ」と野次馬たちがわいわい騒ぐなか、さっそうと現れたのは1台の青いポルシェのオープンカー。
助手席から降りてきた、まだローティーンの少女は女性を助け起こそうとするが、重くてなかなか持ち上がらない。すると、運転席から降りてきた中年男性も手伝い、女性を助手席へと運び込んだ。そのままポルシェで病院へと送り届けたという。
なにせ車はツーシーター。倒れた女性を助手席に乗せたらもう少女が乗る席がない。というわけで、少女はタクシーであっという間にその場から立ち去ったという。野次馬たちはこの小さなヒロインの活躍を携帯で激写し、マイクロブログやネット掲示板にアップ。たちまちネットのホットトピックとなった。
■ポルシェ少女は中学2年生
人助けについつい躊躇してしまう現代中国。その中でさっそうと登場したポルシェ少女が注目を集め、多くのメディアが活躍を報じている。
27日付南方都市報によると、少女の身分が明らかになったとのこと。ある中学校の2年生だということが明らかになったとのお話だが、詳しい個人情報は臥せられている。ポルシェの運転手はお父さんなのかというとそれはどうやら違うらしい。
お金持ちの家柄なのか、年の離れた中年彼氏なのか、なにやらいろいろと想像してしまうような話である。それにしても北京の美少女慈善戦士とほぼ時を同じくして、こうしたヌクモリティ(中国語で「温暖」)ある話がでてくるというのは偶然ではないような気がする。寒い年の瀬、やはりこうした「ちょっといい話」にみんな飢えているのではないか。
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