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中国人妊婦が香港の病院を占拠=困った現地政府は温家宝に直訴(水彩画)

2011年12月28日

■大陸妊婦の香港出産問題。大陸側からの規制は来るか■

*当記事は2011年12月28日付ブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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■師走に押し掛けた野田首相


この時期は党中央もなんとか工作会議とか、よく分からない表彰式やら、お茶会なんかが目白押しです。こんな時期に押しかけた野田総理ですが、胡錦濤も呉邦国も温家宝もよく会ってくれたなあ、と感慨にふけってしまいました。

ただ、習近平はベトナム、タイからの外遊から帰国していたにもかかわらず会見した形跡がありませんし、李克強も同様です。李については来年中の訪日を要請したそうですが、次の二期10年を担う2人には会えず、残り1年の命となったジジイとだけ会って成果はあったのだろうかと首を捻りたくなります。


■香港の大問題:中国本土人の違法出産問題


さて、2011年12月26日、年末の恒例行事の1つである香港行政長官の報告会、マカオ行政長官の報告会が相次ぎ開催されました。香港のトップ、蝶ネクタイことドナルド・ツァン(曽蔭権)は任期最後の報告会なので、「政治協商副主席にしてください」と土下座でもしたのでしょう。胡錦濤からの評価も高かったようですし、まず問題ないと思います。

ところが、ツァン長官から意外な報告が。

温家宝、大陸妊婦の香港違法出産を注視(RFI、2012年12月27日)

20111228_香港_違法出産

見出しだけでは何のことか分からないですね。

大陸人、つまり中国本土人が香港で出産入院するケースがここ数年増加の一途をたどっています。2002年に1250人だった出生数が2010年に3万人を超えているのですが、香港で生まれた子供には香港特別区政府が医療、社会福祉、教育などで補助を出しているのが原因の1つと言われています。

もちろん大陸戸籍より何かと動きやすいこともあるでしょう。そのためわが子を香港人とした後は、香港か、香港と隣接する広東省深セン市に子供を住まわせ、香港へ越境通学をさせているんだそうです。これにより、イミグレが混んじゃうんですね。


■2012年は辰年、予想される出産増

この傾向が顕著となった2007年からは、妊娠7ヶ月以上の中国人女性が香港入りするためには、香港の病院が発行する予約分娩受付証明書が必要となりました。

香港人妊婦のベッドを確保するための措置なのですが、結局仲介業者の暗躍を呼ぶだけとなったため、今年2011年4月からは香港人以外の公立病院における予約分娩を、今年一杯受け付けないこととしました。

中国本土出身者の「出産旅行」受け入れを停止=香港公立病院が発表

来年2012年の干支は龍、つまり中国人そのもの(笑)ですから、出産が増えるのは目に見えています。それを見越して出産計画を立てている夫婦もいますから、先手を打って来年も受け入れない病院も出ています。

しかし、長年「上に政策あれば、下に対策あり」で生きていた大陸人は「救急で駆け込めばいいんじゃね?」と出産間際に香港に駆け込んで、救急扱いで出産するケースが増えてきたのです。これも仲介業者の知恵なのでしょう。

妊婦は大陸の病院で検診していないため、出産して初めて異常が判明することも多く、保育器が大陸人の未熟児に占拠されるなど状況は改善されていません。50万円近い罰金制度もあるのですが、こういう芸当が出来るお金持ちにとっては、多少の罰金を払ってでも香港で産みたいようなのです。


■中国政府の規制策、仲介業者がターゲットに

ツァン長官がわざわざそういう報告をするというのは、事態が報道されているより深刻であることを示しているのでしょう。RFIの報道では、大陸人の出産は昨年2010年の2倍近くに増えており、香港政府の規制策だけではどうしようもなくなったため、中央政府に泣きついたとのこと。この件は今回初めて報告され、温家宝も「高い関心を示した」そうなので、近々締め付け策が発表されるものと思われます。

曾蔭権、大陸妊婦の香港出産問題を温家宝に報告(鳳凰網、2011年12月27日)

で、ですね。記事を見ると、習近平がちゃんといるじゃねえか……。野田は本気で相手にされてないのかな……。習も李克強も26日は特首2人と会見しています。温家宝との会見後に開かれた記者会見を見ると、妊婦ではなく妊婦を斡旋している仲介業者に矛先が向いていると分かりました。まず、叩きやすいところからなんでしょうね。

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*当記事は2011年12月28日付ブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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