中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月29日
Natural Gas / todbaker *image
ビルマの開放路線が進むにつれ、同国への投資が大きく拡大しそうである。2012年は、ビルマ開放初年となるのだろうか。
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■「エネルギー資源大国ミャンマー」は本当か?
こうなると、外国からの期待が膨れる一方だ。ビルマは宝石や、非鉄だけでなく、エネルギー資源大国とレッテルが貼られてくる。しかし、それはどの程度まで真実味があるのだろうか。個人的には、かつて資源開発に携わっていた立場から、疑問も湧きあがってくる。
金、銀、銅、錫、タングステンなどについては、古くからの実績もあり、鉱脈も確認されている。宝石ももちろんそうだ。
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これに対して、原油・天然ガスといったエネルギー資源探鉱の入札は比較的新しい話だ(生産は古くからあるが……)。天然ガスは、特にタイが買っているし、中国がパイプラインを引きつつあるので、インドシナ半島ではまれな資源大国と見られている。
■世界埋蔵量の0.016%の原油
「MOGE」(ミャンマー石油ガス公社)によれば、ビルマの原油確認埋蔵量は、陸上で1億1500万バレル、沖合で1億バレル。天然ガスは、陸上で4000億立方フィート、沖合で16兆立方フィートとのことだ。
この数字をあてにすれば、原油に関しては、世界の確認埋蔵量1兆3600億バレルから見ると、ビルマのそれは、0.016%とたいしたレベルではない。ビルマの2億1500万バレルという原油確認埋蔵量は、世界で見れば、中国の160億バレル、インドの60億バレル、インドネシアの45億バレルなどと比べ、遠く及ばない。
■世界埋蔵量の0.27%、最も注目を浴びる天然ガス
注目されるのは、沖合の天然ガスである。世界の天然ガス確認埋蔵量は6600兆立方フィート(187兆㎥で、原油の約1兆バレルに当たる。1㎥=35兆3000億立方フィート)であるから、ビルマの16兆4000億立方フィートは、世界の0.25%を占めていることになる。
しかし、BP社によれば、ビルマの天然ガス確認埋蔵量は、過去10年でそれから7割増の、28兆立方フィートにも及ぶと見られている。
世界の天然ガス埋蔵量も、アメリカのシェール・ガスなどの非在来型ガスが追加されたことで、現在は6割り増しの1万兆立方フィート(1京立方フィート)になるのではないかと見られている。となると、ビルマに28兆立方フィートあると見ても、世界シェアはやはり0.27%ほどに過ぎない。
オーストラリアの100兆立方フィートやインドネシアの90兆立方フィート、マレーシアの75兆立方フィートなどに比べれば、明らかに少ない。しかし、もちろん未開発の魅力はあるだろう。
■原油よりも天然ガスか、生産高は世界生産の0.45%
ビルマの原油生産の歴史は古い。明治維新前の1853年から掘られている。1962年に軍政になってから、1988年まで外資は閉め出された。そして、1988年になってエネルギー資源開発のため、外資導入が図られた。しかし、2007年時点でも、原油生産は日産2万バレルほどしかない。
9割を占める天然ガスが、日産陸上で1.1億立方フィート、沖合で12.18億立方フィート、合わせて13.3億立方フィート。年産にして4850億立方フィートと、世界の年産高106兆立方フィートの0.45%を産出している。
年産4850億立方フィートというレベルは、オーストラリアの生産量の4分の1ほど。中国やインドの生産量にも及ばないはずだ。とはいえ、過去、生産が停滞していた時期があり、おおいにこれからへの期待がかかる。ビルマ政府は、2004年末から外資への開発ブロックのオファーを進めている。
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■意外にも薄い陸上鉱区の人気
しかし、最近の入札では、陸上の石油・ガス28鉱区の人気は意外に薄いようだ。欧州企業は、陸上の鉱区は魅力がないと言っている。ビルマに近い中国の石油企業も、シノペック社、CNPC社(中国国立石油)、CNOCC社ともに関心は薄い。
中国の3社は、2007年までに、ビルマの提供した鉱区の3分の1にあたる13鉱区を所有しているのだが……。ビルマ側は、50の応札があったとい言っている……。
現在、タイのPTT探鉱社と、インドのONGCビデッシュ社だけが、公に興味ありと表明。どちらもビルマの資源が欲しい国の企業だ。マレーシアのペトロナスも応札したようである。
フランスのトタール社は、沖合のヤダナ・ガス田を開発しているが、今回の入札には応じないという。「民主化の進展を見極めながら」というのを口実にしているが、やはり魅力を感じていないのだろう。ロシアのガスプロム社も入札には応じなかった。
ロイヤル・ダッチ・シェル社は、ビルマよりもベトナムに目を向けている。西欧の企業では、英国の独立系SOCOインターナショナル社が、ビルマへの興味を示し始めた。しかし、今回応札したかは明言していない。
また、1992年にイェタガン・ガス田を発見した同じく英国の独立系プレミアー・オイル社は、2002年に全権益をペトロナスに売却している。沖合ガス田も将来性が低いと考えているのだろうか。それとも会社のお家事情だろうか。
どうやら、陸上の鉱区は外資の石油会社にはあまり魅力的に映らなかったようだ。
■沖合の入札結果が注目されるが……
2006年に中国のCNPC社が契約したビルマ沖の深海掘削も予想を下回ったといわれる。CNPCは一部を探鉱した後、技術者の一部を引き上げさせた。
インドシナ半島においては、陸上の原油・ガス資源はあまり聞かないが、沖合なら、ベトナム沖、またタイとカンボジアが掘るタイランド湾、そしてこのビルマのアンダマン海沖がある。タイはエネルギー資源国ではないが、ベトナムやビルマはどうなのだろうか。
来年2012年以降、沖合の入札結果がどう出てくるかが非常に注目される。
追記:
12月19~20日とインラック首相がビルマを訪問したが、ピチャイ・エネルギー相も同行した。ビルマから2つの鉱区がタイのPPTEP社に与えられたが、いずれも陸上の原油の鉱区である。またアンダマン海のMD7、MD8の2つの鉱区も与えられるようだが、これらも原油である。PTTEPは沖合ガス田の共同開発などで実績を持つ会社だ。
「1㎥=35兆3000億立法フィート」の部分、
抜けと誤字がありました。
「1兆㎥=35兆3000億立方フィート」(< 兆、立方)