中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年12月30日
*中国ネット上の「もし君が落雷による追突を信じろっていうなら、僕はむしろこの原因を信じたいね」というテロップ付画像。
■これまでの経緯
7月23日、浙江省温州市で高速鉄道の衝突事故が起きた。高架から車両3両が転落する大事故となり、40人が死亡、172人が負傷する大惨事となった。
事故後、破損した車両を穴に埋めようとしたなどの隠蔽工作も発覚。現場記者がマイクロブログを使ってリアルタイムでレポートを流し、ネット民がそのつぶやきに注目。さらに新聞などマスメディアも連日特集報道を続けるなどの注目を集めた。
中国政府の報道禁止令以後、一時ほどの盛り上がりは見られなくなったものの、事故原因が徹底的に究明されるのかどうかに注目が集まっていた。当初は9月中旬の公開が予定されていた報告書だが、遅れに遅れ、事故から5カ月以上が過ぎた12月28日に公開された。
■積み重なった事故原因
28日公開の事故調査報告書だが、全文がネットで公開されている(財経網)。とはいえ、膨大な量であり、かつ専門用語が多用されているため、一般人が読むのは難しい。日本語報道でも複数の記事が報告書について伝えているが、「列車先頭部を埋めようとしたことを過ちと認めた」「54人が処分された」程度の情報でとどまっている。唯一頑張ったのはサーチナぐらいだろうか。
(関連リンク:「中国高速鉄道の追突事故、4つの原因による業務上過失と認定」サーチナ、2011年12月29日)
私も鉄道関連については素人なのでちょっと自信がないのだが、蛮勇をふるって事故調査報告の要約にチャレンジしたい。間違いがあればぜひご指摘いただきたい。
・事故の発端は落雷
2011年7月23日午後7時27分から34分にかけ、現地では340回を超える落雷が観測される異常気象。100キロアンペアを超える強力な落雷も11回観測された。
・列車制御センターの故障
落雷の影響を受け、列車制御センターのLKD2-T1コントロールシステムのフューズが溶解、切断。現地状況のモニタリングができなくなった。フューズが飛んだ時点で事故地点には車両がなかったため、青ランプが点灯していたが、その後、列車が進入しても「車両なし」を示したままだった。
・連絡システム、信号の故障
列車と制御センターをつなぐ通信システムも故障。また信号システムも故障し、事故現場では信号が青と黄色の間で不規則に変化し続けた。現場状況をモニタリングしている温州南駅では事故現場区間の信号は赤と表示されていた。
・検査の甘さ
作業員が徒歩で現場を確認したが、「作業員が徒歩で検査したが、工務設備は良好なり。使用可能」と報告している。
・D3115(先発列車)
午後20時21分、事故現場に侵入。事故区間の回線故障により自動停止装置が作動し列車は停車。運転士は目視モードでの発車を試みるが成功せず。回線故障により外部との通信にも失敗。午後20時29分、衝突の1分前に移動を開始した。
・D301(後発列車)
区間閉塞方式での運行開始。事故区間に車両がいる可能性がありとの連絡を受けたのは衝突の30秒前。急ブレーキをかけたが間に合わず。D301が時速90キロ、D3115が時速16キロの速度で移動しており、衝突した。
■救援活動について
がんばって救援活動に努めたということなのだが、当時の話題となった問題について2点触れられている。
24日早朝、「事故から8時間が経過。この間、6度にわたり救出活動が続けられたが、すでに終了した」「救出活動はすでに終了した。生命探査機によると、生命の兆候は確認されていない」と報道されたが、これは誤りで救出活動はなお継続されていた。生命探査機による確認も高架下での調査を指したものと弁明している。
また、日本でも話題となった列車を埋めようとした問題だが、「午前5時半、上海鉄路局の責任者は、単純に従来の事故現場処理方式を採用し、損傷した列車先頭部及び部品を埋めようとした。穴を掘り、先頭部と部品をその中に入れた時点で、上級幹部に中止するよう指示された。よって最終的には埋められてはいない」とのこと。午前11時に現地に到着した張徳江副首相も「原因究明のため、残骸を埋めてはならない」と指示したという。
■事故の責任は誰に?
事故の責任については、以下3カテゴリーに分類できそうだ。
・雷による故障はともかく、故障しても安全を担保する設計になっていなかったKD2-T1型コントロールシステムを開発した通号集団。
・コントロールシステムの安全性を確かめることなく購入してしまった中国鉄道部、運輸局。
・トラブルに対して有効な対策が取れなかった上海鉄路局及び回線管理業者、現地の設備保安作業員。
鉄道部は基本建設ルールを守っていない。鉄道建設において工期を焦り、ひたすらにスピードを求めて安全性を軽んじていた。事故対策及びアクシデント対策が不十分であった。
今回気付いた点は、
「以上気象」->「異常気象」
です。