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原油市況に振りまわされるタイ=エネルギー消費奨励策から脱出できるか?(ucci-h)

2012年01月04日

■このままでは原油市況にいっそう翻弄されるタイ経済■

*当記事は2012年1月2日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


■原油輸入額は史上最高を記録

タイは原油輸入国である。2011年の原油輸入量は一日当り83.7万バレル。昨年の87万バレルから4%ほど減少した。洪水で製油所も閉鎖されたためだ。日本の原油輸入量一日340万バレル(世界第3位、2010年)の4分の1だが、経済規模から考えれば原油輸入量はむしろ多いと言えるだろう。

2011年の原油価格(ドバイ原油)は、前年平均のバレル78ドルから106ドルと36%も上昇した。そのため、タイの原油輸入額は1兆300億バーツ(約2兆5200億円)と前年比30%増を記録した。2008年の1兆200億バーツ(約2兆4900億円)を抜き、史上最高を記録している。

2012年だが、ドバイ原油価格が平均102.7ドルほどで落ち着いてくれれば、消費の伸びも数パーセントだろうから、原油輸入代金は増えないだろうとエネルギー省では楽観視している。

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*ドバイ原油の価格推移。


■「燃料3種」に補助金を支給

今年のエネルギー消費量の内訳だが、ガソリン製品が計一日あたり1998万リッター。昨年の2030万リッターから1.6%減少した。しかし、国内価格が優遇されているディーゼル油は一日5230万リッターと、ガソリンの2.6倍も消費されている。前年の5060万リッターから3.3%増えている。

同じく税優遇されているLPGは、一日1万7837トンと前年の1万5000トンから19%も伸びている。LPGと同様に、安い自動車燃料として使われるCNG(圧縮天然ガス)は、一日6387トンと前年の5,030トンから27%も増大。対LPG比で36%を占めるにいたった。

ディーゼル油、LPG、CNGという「燃料3種」に対する価格優遇策を見直さない限り、原油価格高騰に脆弱なタイの問題は解消されない。

「燃料3種」に対する補助金だが、2011年度は計1290億バーツ(約3150億円)が支給されている。ディーゼルが680億バーツ(約1660億円)、LPGが360億バーツ(約879億円)、CNGが250億バーツ(約611億円)という内訳だ。政府歳出額の6.5%を占めている。

このままいけば、数年後には年数千億バーツ、政府予算の10%を占める可能性もあると懸念されている。
(関連記事: 「インドネシアを他山の石にエネルギー補助政策を見直せるかインラック政権」チェンマイUpdate、2011年9月11日)


■エネルギー消費奨励策を続けるタイ

2012年1月16日から燃料課徴金の再徴収がはじまるものの、その金額は以前よりもずっと少ない。インフレ圧力が続く中、インラック政権が燃料補助政策を撤廃するとの声は今のところ聞かれそうもない。
(関連記事: 「1月半ばより自動車燃料の課徴金が再徴収されるが……」チェンマイUpdate、2011年10月3日)

エネルギー節約政策どころか、エネルギー消費奨励策を続けるタイ。このままでは原油市況の波にいっそう溺れやすくなろう。

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*当記事は2012年1月2日付ブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。


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