中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年01月06日
The Prop Store of London - LA - nail gun from Event Horizon / PopCultureGeek.com
■計画的な狂気の殺人
2012年1月4日、吉林省延辺朝鮮族自治州警察は、事件に関する記者会見を開いた。
犯人は賈宝東(41歳)。かつて詐欺罪で8年間服役していた経歴を持つ。お手製の改造拳銃を3丁保有していたという。この拳銃の威力を確かめてやろうと思い立ち、昨年12月16日に計画を実行した。
まずは身元がばれないようにと吉林市蛟河市の自宅から100キロあまり離れた延辺朝鮮族自治州敦化市まで列車で移動。その後、1時間あまりも歩き回って午後3時頃にターゲットを見つけた。被害者は飲食店の女性従業員だったので、目を付けられたのは仕事中だったのではないか。
被害者が帰宅の途につき人気のないところに差し掛かるまで、賈は待ち続けた。午後8時、被害者が住宅街の中を携帯電話をかけながら歩いているところを、賈は銃撃して殺害、逃走した。使用した改造拳銃はネイルガン(釘打機)を改造したもので、釘を高速で飛ばすという危険きわまりない代物だ。
ネイルガンは基本的に大工道具だが、映画作品の中では武器として使われるケースも少なくない。また実際に凶器として使われたケースもある。2008年にオーストラリア・シドニーで発見された中国人移民の遺体はネイルガンで殺害されていた。長さ8センチ以上もある釘が34発も頭部に打ち込まれるという残虐なやり口だったという(ロイター)。
事件後、捜査を続けた警察は「目出し帽をかぶった怪しい男」を容疑者と断定。男が敦化市駅から蛟河市方面行きの列車に乗ったことを突き止め、1月1日に逮捕した。賈の自宅からは拳銃3丁、火薬1包、銃弾6発、大量のパチンコ玉が発見された。改造ネイルガン以外にも火薬式の改造拳銃も保有していたようだ。
■改造拳銃は珍しくないが……
中国では、一般人のケンカで銃が出てくるというケースは聞かないとはいえ、改造拳銃や違法販売された拳銃がそれなりに普及しているようだ。各地域の警察は毎年、「**丁の拳銃、**発の弾丸を押収した」と成果を大々的に発表しているし、田舎を旅行すると露店で改造拳銃を売っていたという笑えない話も聞く。
とはいえ、「威力を試したいから人を撃ってみよう」というのはきわめて異例だ。しかもわざわざ隣の街まで出かけて、ターゲットを5時間も追尾した上に発砲するという計画的な犯行で、犯人の偏執性が浮き彫りとなっている。
人口が日本の10倍の中国では猟奇的な事件の数も10倍以上あるわけで、いちいち驚いてはいられないとも言えるが、見ず知らずの女性を狙った改造拳銃の試し打ち、犯人の偏執性、手製改造拳銃マニアといった数々の異例の要素が中国国内でも話題となっている。