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Batavia Jakarta / "The owner"
■インドネシア・パプア州鉱山のストライキ
中国の労賃が高くなってきた。これに伴い、インドネシア(人口2億4千万人)での労働集約的軽工業が増えている。しかし、インターネットを通じての情報社会の今、いつまでも労賃の差を保ったままにしておいてはくれない。
事の発端は、インドネシアのパプア州(ニューギニア島の西半分。東半分は独立国パプア・ニューギニア)にある、米国フリーポート・マクモラン社(06年に産銅大手フェルプス・ドッジを買収)のティミカ非鉄鉱山で起こった。賃上げ要求のストライキで3ヶ月間操業が停止。12月に37%の賃上げをインドネシア人労働者は獲得した。
この際、若い労働者から、昔なら考えられないような要求が出された。「我々の時給は、アメリカの仲間のそれの10分の1しかない。この鉱山から企業全収入の30%を稼ぎ出しているのに……。時給を1.5ドル(約116円)から7.5ドル(約579円)に上げろ!30ドル(約2320円)の日給を200ドル(約1万5400円)に上げろ!」といった要求が出たのだ。
■ジャカルタのカルフールにも波及
従来の5~6倍の給与を求める要求は、さすがにパプア州の生計費を無視したもので受け入れられなかったが、インターネットを通じ、世界の情報を手に入れられる世代が出てきたことが、こういった米国労働者との比較での要求となって出てきた。
そして、このティミカ鉱山でのストによる賃上げが、インドネシアの首都ジャカルタにも及んでくる。ジャカルタに進出して13年になるフランスの流通大手「カルフール」(タイではビッグCに買収されたが)の若い労働者たちが、8月末に1000人規模のストを打ち、現在も賃上げ交渉を行なっている。その多くは、契約社員である。背後には13万人を抱える組合がついている。
■タイやフィリピンよりストが多いインドネシア
インドネシアでのストの発生率はタイやフィリピンよりも多いという。労働省の一番新しいデータである2010年の数字でも、月平均8件のストが起きているという。インドネシアには契約社員、非正規社員といった雇用の形態が多いといわれる。もちろん、その方が人件費が低くて済むからだが、インドネシアの労働法の厳しい解雇規定も、正規に社員を雇うことを敬遠させているという。
つまり、社員を解雇するにあたっては、退職金と勤続功労金あわせて最高賃金の19か月分を雇用者は払わなければならない。さらに、自己都合の退職者にも損失補償金が加わるという。こうした規定も、契約社員を多くしているようだ。
いずれにせよ、経済が成長するにつれ、労働者の取り分増の要求は強くなってくる。外資は、このドミノ現象を怖れている。インドネシア人は穏健だと言われるが、こと労働者になると、強い要求に出やすいということなのだろうか?
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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の許可を得て転載したものです。