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2012年01月07日
Hoi An river bank / JSolomon
■ベトナム銀行業界の不良債権問題
欧州の財政問題は銀行の信用問題に変容してきているが、アジアでなお20%近いインフレ率(11月19.8%)に悩むベトナムの最大の経済課題は、金融機関、銀行の健全性、具体的には膨れ上がった不良ローンの処理という点になってきたようだ。
(関連記事:「不良資産の処理に追われるベトナムの銀行」チェンマイUpdate、2011年10月4日)
ベトナムには国営、民間、外資系合わせて計100行前後の銀行があるが、その多くが過去のローンの急拡大から不良債権を抱えている。ベトナムの銀行融資残高は過去10年で14倍、年35%増のペースで拡大してきた。ベトナム中央銀行によると、2011年9月末現在、ベトナム銀行業の融資残高は2500億ドル(約19兆3000億円)。GDPの2.4倍に達している。
もともとベトナムの銀行は資本が過小だ。不良資産の増大はすぐに資金不足に直結する。しかも金利の高さが借り手の障害にもなっており、金融業の機能が制限されてしまっているのが現状だ。このままでは、経済発展にも支障をきたしてしまう。
ベトナム銀行業界の不良債権率は公式統計で3.2%。2011年末には5%に達する可能性があるアナウンスされている。もっとも統計数字があいまいなベトナムのこと、実際の割合はもっと高いだろう。外資筋は10%以上、銀行アナリストは15%を超えていると見ている。
■政府の対策
不良債権は放置できない問題だ。ベトナム共産党政府銀行業の再編成に乗り出す意向だ。もっとも再編成といってもつまるところは合併しかない。小規模銀行を合併させ、2015年までに銀行の数を半分に減らすつもりだと前中央銀行総裁はコメントしている。2011年12月には、さっそくホーチミン市の3行が合併した。
もっとも合併しても不良資産が減るわけではない。政府や大銀行にも救済する余力は少ないようだ。最終的には誰かが不良債権をかぶらなければならない。そこで期待されるのが外資系金融機関だ。外資系といっても、欧米系は欧州の債務問題で余裕に乏しい。期待されるのはアジア、中国だろうか。
現在、ベトナムでは外資系銀行によるベトナムの銀行への出資には厳しい制限が課されている。外資系銀行1行では保有比率は最大20%、複数の合計でも最大30%までと制限されている。今後はこの規制が緩和されることになるのだろうか。
外資系銀行が増え資金が豊かになるだけでなく、ベトナム国営企業を中心とする野放図な経営姿勢がチェックされるようになれば、経済発展にはプラスだと考えるが。
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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2011年12月30日付記事を許可を得て転載したものです。
資本を注入して過小資本を解消し、血まみれになりながら不良債権を処分して、そこで黒字が出るのであれば、手を出す金融機関もあるのかもしれませんが、結局は不良債権の処分に関しては(馬鹿が出てこない限り)政府が出てこざるをえないと思います。
ベトナムの場合、貿易収支も経常収支も赤字ですので、これからどうなるのか非常に興味深いです。
debtの解消法方は、「成長」か「より大きな債務(debt)」のどちらかしかありませんから、中国がアジアのギリシャになっていくのか、それとも成長が負債を追い越していくのか、それとも97年のような通貨危機を体験した後、驚異的な回復を見せてくれるのか、本当に興味深いです。
不良債権の総額が、対GDP比でどれくらいなのか興味があります。