■バンコクの西300km、ビルマの「ダウェイ港湾工業地帯」開発の概要が明らかになってきた■ *本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2011年12月30日付記事を許可を得て転載したものです。
Mandalay port / Gusjer
■漁村ダウェイに注がれる熱視線
ビルマの南部、アンダマン海に面する漁村ダウェイにビルマ最大級の臨海工業地帯が開発されそうだとお伝えしたのは、昨年12月だが、それから1年、その概要がだんだんはっきりしてきた。
(関連記事:「注目されるビルマのダウェイ経済開発」チェンマイUpdate、2010年12月8日)ダウェイはビルマの港湾といっても、ラングーンよりもタイのバンコクのほうがよほど近い。カンチャナブリを経てバンコクの西300kmに位置する。国境を越えた道路が完成すれば、バンコクから南のマラッカ海峡を経ずとも、インド方面への海路が開けることにもなる。中国も当然ねらっている。
このダウェイ開発を仕切っているのが、タイ最大の土木建設会社「イタリアン・タイ開発」(ITD)だ。1954年にチャオプラヤ川での沈没船引き上げに協力したイタリア人ベーリンジェリとタイ人チャイジュット・カルナスータが1958年に設立した。
スワナプーム空港の建設やバンコクのBTS(スカイ・トレイン)やMRT(地下鉄)の建設にも携わってきている。社名からは、イタリアとタイの合弁のように見えるが、今では創業家のカルナスータ・ファミリーを中心に株主も経営陣もほとんどみなタイ人である(足元の業績、財務内容は必ずしも良くないが……)。
■日本のJBICも関与
ダウェイ開発は、インフラの建設と、6つの優先的工業プロジェクトからなる。インフラの開発に向けて、ITDでは、125億ドル(約9630億円)の大型ローンを予定している。内訳は港湾と道路の建設に35億ドル(約2670億円)。鉄道建設に20億ドル(約1540億円)。石炭火力発電(出力計4000メガワット)に70億ドル(約5390億円)だ。
125億ドルのうち、港湾・道路建設(35億ドル)については日本の国際協力銀行(JBIC)に、鉄道建設(20億ドル)については中国の銀行と交渉している。ITDはビルマ政府から25600ヘクタール(256平方km)の土地を75年間、譲り受けている。25600ヘクタールといえば、真四角にすれば16km四方になる広大な土地だ。
ここに以下のような工業団地を作る予定だ。
・港湾施設976ヘクタール(全体の面積比3.8%)
・発電所368ヘクタール(1.4%)
・製鉄所2200ヘクタール(8.6%)
・石油・ガス施設1392ヘクタール(5.4%)
・石油化学コンプレックス2755ヘクタール(10.8%)
・肥料プラント384ヘクタール(1.5%)
製鉄所については日本の2社、中国の1社と協議している。発電所については、タイのラチャブリ発電が30%出資の予定だ。ITDは、6つの優先工業プロジェクトの資金を得るため、来年、全体の3割にあたる8000ヘクタール(ほぼ9km四方)の土地を売却する予定だ。ITDは、ダウェイ開発のインセンティブを得るため、ビルマ政府から、最初の5年間の法人税免除、その後5年間の15%低税率を獲得している。