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「くそったれの鉄道部め!」現実を知らない官僚に激怒=旧正月の民族大移動―中国

2012年01月08日

2012年1月8日、旧正月の民族大移動・春運が始まった。のべ31億6000万人が移動すると予測されている。今年は高速鉄道のネット販売システムが導入されたが、パソコンを使い慣れていない出稼ぎ農民からは怨嗟の声が上がっている。


Coach station crowds, Nanjing
Coach station crowds, Nanjing / tboothhk

■31億6000万人の「民族大移動」

31.6億人の「民族大移動」…中国・12年旧正月期の輸送予想
サーチナ、2011年12月8日

中国政府は8日、2012年の春節(旧正月)期における旅客輸送の見通しを明らかにした。1月8日から2月26日までの40日間で、前年比9.1%増の延べ31億5800万人が交通機関や自家用車を利用して移動するという。中国新聞社が報じた。

鉄道利用者は6.1%増の2億3500万人、道路交通利用者は9.5%増の28億4500万人、船舶利用者は3%増の4350万人、航空機利用者は7%増の3488万人になる見通しだ。

日本の混雑など比較にならない凄まじさの中国。日本のテレビでもよく紹介されているので見たことがある人も多いのではないか。ただ紹介される映像は鉄道が中心というイメージだ。実際には道路交通(中・長距離バス)の利用が圧倒的に多い。

ただし、中国の長距離バスは辛い。本当に辛い。寝台バスだと30時間、40時間もベッドで寝続けるなんていうのは当たり前。渋滞があればいつ着くかはわからないし、雪でも降った日には完全にストップしてしまうこともある。2008年の春運期間には中国南部を雪が襲い、車の中で数日過ごすなどという大惨事も起きている。

というわけで、長距離の帰省ならばどうにか鉄道に乗りたいというのが人々の願い。というわけで、これまた恐ろしいばかりの切符争奪戦が繰り広げられる。1週間、切符販売所で行列を続けたなんていう話もざらにあるほどだ。


■F5キー連打合戦

まず切符を入手するところから大混雑、という事態をどうにか変えようと中国鉄道部は切符のネット販売システムを導入した。高速鉄道限定だが、ネットで予約に成功しさえすれば、えんえんと販売所に並んだ揚げ句、「没有」(売り切れ)という無情な言葉を聞かなくてすむ。

しかし、中国鉄道部は春運をなめていた。ネット予約システムがスタートすると、アクセスが集中し、サーバーがパンク状態に。どうにかアクセスしようと、F5キーを連打する人々。ますます遅くなるウェブサイト。難関を乗り越え、どうにかアクセスできた人に突きつけられる「売り切れ」という現実。まさに阿鼻叫喚である。


■ある出稼ぎ農民の手紙

F5キーを連打している人も大変だが、しかしパソコンを使えない人はもっと大変だ。ネット販売のほうが窓口よりも早く売り出されるので、ネットを使えないかぎり、高速鉄道の切符を入手できる望みはほぼゼロとなる。

2012年1月4日付温州都市報は、ネットを使えず切符を買えない出稼ぎ農民の悲哀をつづった書簡を掲載した。

中国鉄道部の幹部の皆様

私は黄慶紅と言います。37歳、重慶市彭水の出身です。もう温州で10年以上も働いています。あなたがたのことはテレビでしか見たことがありません。一生、会う資格はないのでしょう。ですが、言いたいことがたくさんあります。ですから手紙を書きました。どこに出せばいいのかわからなかったので、新聞社に出すことにしました。

私は今日、切符を買いに行きました。これで4回目です。ちょっと運試ししてやろうと思ったのですが、やはり切符はありません。窓口の職員によると、ネットと電話の予約のほうが売り出しが早いので、窓口にはほとんど残っていないのだそうです。

「窓口に並ばないですむように」というのが鉄道部の初志であることは存じています。ですから、こんなことを導入したのでしょう。確かに窓口の行列は短くなりました。あなたたちのストレスも解消されたかもしれません。早めに帰宅してご飯を食べられるかもしれませんね。ですが、私たちにとっては、徹夜の行列のほうがまだ希望がありました。今は何も残されていません。ただただ怒りがこみ上げてくるだけ。「くそったれの鉄道部!」と罵ってやりたいのです。


というのが書き出し。黄さんが働く工場には40人の出稼ぎ農民がいるが、誰一人としてパソコンを使えない。哀れに思った経営者が代わりにネット予約にチャレンジしてくれたが、切符は全部売り切れ。ならばと同僚たちはみなひまを見つけては電話予約センターに電話をかけまくっているが、買えたのは一人だけだったという。その同僚は大喜び。「切符購入はいつから宝くじになったのか」と黄さんはキレまくっている。

シメの言葉もまた強烈だ。

毎年、春運での切符購入の行列は私たち出稼ぎ農民にとって苦しみでした。ですが、今年は苦しみすらも失われてしまったのです。

あなたがた(鉄道部幹部)はエアコンの効いた部屋でソファに座って、タバコをふかしてはお茶でも飲んでいるのでしょうね。こんなネット購入なんて導入して、あなたがたは私たちの生活を想像したことがあるのでしょうか?切符購入の苦しみを体験したことがあるのでしょうか?数十時間の立ち乗り切符さえ手に入らないのです。今、私たちには恨みの気持ちしかありません。でもそれを発散する場所すらないのです。


■中国鉄道部の適当言い訳集

かなり泣かせる名文調の手紙で、反応も大きかった。5日、上海鉄路局は「出稼ぎ農民向け団体切符の最低発行人数を30人から10人に引き下げ」「雇用証明がなくても団体切符の購入を可能に」「出稼ぎ農民向け切符の増枠」という対策を発表した(財経網)。

一方でこんな泣き言も。

出稼ぎ農民の数はあまりにも膨大です。すべての切符を出稼ぎ農民に与えたとしても、それでもまだ解決できません。鉄道の輸送力には限界があるのです。

それなりに納得できる言い訳だが、財経網は追い打ち記事を出している。「中国鉄道部の切符購入難解決の言い訳は年々変わっている」だ。

2010年には、鉄道網の発展は初期目標の規模に達する。切符購入難は解決するだろう。」
2007年2月1日

3~5年後には、中国客運専門路線網が初期的な形成を終える。輸送力不足は大きく緩和され、一部主要路線の混雑は歴史となるだろう。」
2008年1月25日

2012年には鉄道の輸送能力不足は初期的な緩和を迎え、切符購入難は大きく変化するだろう。」
2009年10月7日

第12期5か年計画(2011~2015年)の終わりまでには、鉄道建設の発展に伴い、切符購入難は根本的に変化するであろう。歴史となると言ってもいい。」
2011年1月15日

うーむ、「ディスイズ官僚答弁」というべきか、見事なまでの適当っぷりだ。とはいえ、一説では切符を買えないで困っている人は1日に200万人に達するとも言われている。鉄道輸送能力が倍増するぐらいでないと、この状況は緩和できないのではないか。2011年は「鉄道大躍進」の転換点となり、今後は建設ペースが鈍化するとも予想されている。

春運の切符争奪戦はしばらく「歴史となる」ことはなさそうだ。

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