昨年末、裁判に敗れ中国本土でのiPad商標を失ったアップル。今度は海賊版流通幇助の罪で訴えられた。2012年1月7日、
新快報が伝えた。
Beijing 北京 : 26 Sep 2010 / chinnian
■海賊版小説の一大集約拠点となった百度文庫
2011年に成立した作家権利擁護連盟。海賊版流通をストップさせ、作家に正当な収益をもたらすことが目的だ。
昨年3月、まず中国検索サービス最大手・百度のドキュメント共有サービス・百度文庫がターゲットとなった。同サービスはテキスト、PDF、ワードファイルなどのドキュメントファイルを共有できる便利なサービスだが、ニーズが多い文章をアップすればするほど、そのユーザーの階級が昇進しポイントを獲得できるシステムが導入されていた。
かくして、中国のネットに転がる海賊版がユーザーの力により集まってくる事態となり、海賊版小説の一大集約拠点としての地位を築いた。日本版の百度ライブラリも公開されたが、出版社の抗議を受け、後に閉鎖されている。
作家権利擁護連盟はブログや新聞などを通じて、海賊版の問題性と作家、出版社の窮状を訴えて世論の支持を得た。その圧力に百度側も「ユーザーが勝手にやっていること」としらを切ることができなくなり、改善を約束している。もっともいまだに対応が不十分だとして、作家権利擁護連盟の批判は続いている。
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スマートな海賊版ビジネスモデルを手助けするアップル
作家権利擁護連盟の次のターゲットとなったのがアップルだった。意外に思われるかもしれないが、iPhoneやiPad向けのアプリを販売するオンラインショップ「App Store」は海賊版の温床になっている。
アップルの規約に合致しているかどうか、性的表現はないかなど、厳しい審査で知られるApp storeだが、小説アプリが正規版か海賊版かについては無頓着。先日、日本の人気作家・東野圭吾氏が新作の版権を中国には提供しない方針だと報じられたが、そのきっかけはApp storeで海賊版が大々的に流通していることを知ったからだという。
しかも課金システムがあるため、 今までの海賊版ビジネスでは難しかった有料販売が実現した。売り上げのうち30%はアップルの収入となる。
■『徳川家康』の海賊版も流通
作家権利擁護連盟は昨年から訴訟する方針を表明していた。その後、警告書簡を送ってきたが、「アプリ開発業者と交渉して欲しい」の一点張りで、実質的な対応はなかったため、ついに正式に裁判に訴える運びとなった。北京市第二中級人民法院に提出された訴状では人気小説家・韓寒など作家9人の37作品の著作権侵害が問われている。
その作品の中には新経典図書翻訳出版が版権を取得した日本の歴史小説『徳川家康』も含まれている。求めている賠償金額は計1200万元(約1億4400万円)。今後、他の作家による訴訟第2弾、第3弾も予定されている。
さらにちょっと興味深いのは、作家権利擁護連盟弁護士の王国華氏の発言だ。「米国と中国はベルヌ条約の加盟国であり、著作権保護について両国民は同等の扱いが保証されている。米国政府はアップルの著作権侵害を取り締まらなければならない。我々は中国政府が米国と交渉するよう希望している」というものだ。
中国政府が作家権利擁護連盟の求めを受け入れるのかも興味深いポイントだ。
米国が中国に文句を言うパターンは多いが、その逆はきわめて異例。昨年はニセ・アップルストア、ニセiPhone問題など中国企業のアップル製品パクリが話題を集めたが、2012年は逆にアップルの侵害が訴えられる展開でスタートすることとなった。
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