■中国のカンニング事情と大学の対抗策■
*本記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の2012年1月8日付記事を許可を得て転載したものです。
*画像はカンニングツール・ネットショップで販売されている骨伝導メガネ。耳にイヤホンを入れなくてもメガネが骨伝動スピーカーになっており無線を聞くことが可能。
2012年1月7日から9日まで、中国では全国大学院入試が実施されました。日本とは異なり、中国では大学院入試もセンター試験のような全国統一試験が導入されています。今回はこの大学院入試関連について、各紙が報じたトピックをご紹介します。
■受験者数が激増
8日付
京華時報によると、修士試験受験生は165万6000人。受験生の増加数は3年連続で10万人を超えたとのこと。さすが中国という膨大な数です。
大学院の定員数も大きく拡充されており、合格者数は2007年の36万4000人から2011年には49万5000人にまで増加しています。昨年の競争率は3倍程度。今年の合格者数はほぼ前年と同数だと予測されています。
■醤油党
京華時報では、「醤油党」なる言葉が紹介されていました。
本気で合格するつもりはなく、様子見での受験生を指す言葉です。翌年以降の下見としての受験だとか。「俺には関係ない」という意味のネットスラング「打醤油」にかこつけた言葉でしょう。
(原義は「醤油を買う」。2008年、テレビの街頭インタビューに答えたある市民が「俺には関係ない。醤油を買いに来ただけだ」とクールに答えたことから新たな意味を持つネットスラングとなった。レコードチャイナ)他にも全く勉強しないで試験に挑む「裸考」という言葉もあります。
(関連記事:「中国の「裸」現象」政治学に関係するらしきもの、2011年12月18日)■大学院進学者が増えた理由
さて、中国の大学院進学者数はなぜこんなに増えているのでしょうか。8日付
中国教育網は、中国社会の発展に伴い、産業の専門化が進展し、求められる人材が高度化しているからだ云々と分析しています。模範解答ですが、果たして事実でしょうか。
中国では好条件の就職を得るためには激烈な競争を勝ち抜く必要があります。その競争を少しでも有利に勝ち抜くために、より高い学歴が欲しいという風潮があり、大学院進学者が増える原因となっています。一方で大学院に進学したからといって就職が確約されるわけでもなく、また大学院教育と企業のニーズのミスマッチもあり、大学院への進学は必ずしも有利ではないのではといぶかしむ声もあります。
■大学院入試でも飛び交うハイテク・カンニング
競争率3倍の狭き門となれば、カンニングしてでも受かりたいと考える人が出てきます。8日付
現代快報がカンニング・ガジェット最新事情について報じています。
消しゴムや腕時計にカンペをしのばせるという古典的な手法だけではありません。電子機器を利用したカンニング・ガジェットが流通しており、コイン型の小型レシーバー、革財布が動いて答えを知らせるなどなど、さまざまなグッズがあるようです。
■大学の対策
試験主催者もハイテク・カンニングについては重々承知しています。というわけで、会場に入る前に金属探査機を使ったチェックがあり、耳や脇の下など小さなガジェットを隠しておけそうな場所を徹底的にチェックするのだとか。
昨年の記事ですが、KINBRICKS NOWの記事「
日本のカンニング対策はぬるすぎるっ!電子戦さながらの中国試験最前線をご紹介」が中国カンニング事情を詳しく説明しています。これがすごいの一言。受験生が隠し持った受信機に電話で正解を伝える業者がいるのですが、警察がこの電波を傍受、ジャミングするといったことまであるそうです。
また、現代快報が紹介したカンニング対策でなるほどと笑ってしまったのが、何種類もの問題を用意する方法です。試験の内容そのものは同じなのですが、出題順が変えてある問題が複数用意されているわけです。無線を使って、「今から正解を送信する。上から、A、D、C、D……」と選択問題の解答を送ったとしても、各受験生で問題の順番が違うので意味をなさないという対策です。