「2年で中国最大のネットショッピングサイトになってやる。」
*画像は品聚網のトップページ。
かつてオンラインゲーム会社を起業して大成功を収めた中国ゲーム業界の風雲児が今度はネットショッピング業界に殴り込みをかけた。20億元(約240億円)の投資を集めたと豪語しその活躍が期待されたが、オープン3カ月足らずでサイト閉鎖という驚きの結末が待っていた。
■赤字12億円超のバーゲンで度肝を抜く
葛斌斌氏は2003年、金酷ゲーム開発室を立ち上げた。後に同社は中国ネットゲーム企業大手・盛大ネットワーク集団の旗下に入り、「魔界Online」「魔界2」「諸侯」などの大ヒットゲームを生み出している。2011年、葛氏は2度目の起業を決めた。今度チャレンジする分野はネットショッピング(C2C)だ。
(C2Cの、本来の意味は消費者間取引だが中国では中小零細企業が出展するショッピングモールという側面が強い)
中国のC2C分野にはタオバオという巨人が存在する。eBayを駆逐したタオバオは中国ネットショッピング市場に圧倒的な地位を築いた。だが、そのタオバオにもニセモノが多すぎるなどの欠点があると葛氏は指摘。楽しいネットショッピングが体験できるまったく新しいC2Cサイト「
品聚網」を作り、2年でタオバオを抜き、3年で上場するとの野心的な目標を示した。
葛氏曰く、盛大ネットワーク集団を含めて投資の約束を取り付けており、その規模は20億元(約240億円)を超えると発言していた。実質的には盛大グループの傘下企業という見方まであったほどだ。同サイトは2011年10月にテスト運用を開始。2011年12月には「1元(約12円)ショッピング体験」という赤字覚悟のバーゲンセールを敢行。その経費は1億元(約12億元)以上と見られ、「さすが葛氏、さすが品聚網」と人々を瞠目させた。
*品聚網で販売されていた日本の商務ビザ。本物だったら問題だし、ニセモノでもやっぱり問題だという困った一品だ。 ■企業経営者のチャット文化にどっぷり?!
ところがその華々しい活動から1カ月もたたぬ2012年1月9日、「品聚網」は資金難によるサービス停止を発表した。出展企業は保証金を預けているが、2月末までに全額返済すると発表している。
葛氏によると、資金難の原因は盛大ネットワーク集団が約束した投資を実行しなかったためだという。葛氏は盛大ネットワーク集団の陳天橋CEOとのチャット記録を公開し、その約束破りを批判している。
「もしボクが君に資金を融通することで目標が達成出来るならば、絶対に追加投資すると約束するよ。目標を達成できないなら追加はしない。」
「2億という計画通りでいいよ。」
「ボクはきっと投資するから。」
というチャット記録が公開されている。約束破り以上に、ネット時代の経営者たちはこんな大事な話をチャットでやりとりするのだろうかというほうが気になるのだが……。なお盛大ネットワーク集団は「約束破りなんかしてないし、そもそも品聚網に投資なんかしてない」と発表。主張は真っ向、矛盾している。
■中国ネットショッピング業界も冬の時代
先日、不動産業界の「焼銭モード」から「過冬モード」への転換を紹介したが、ネット業界でも同じ状況が起きている。2011年12月には呼哈網に「給与未払いで内紛。従業員の90%が辞めた」との噂が流れ、サイトが閉鎖状態となった。12月28日には網易旗下のL.163.comの閉鎖が発表された。品聚網を含めると、この1カ月で3つのネットショッピングサイトが閉鎖されたことになる。ネット販売大手・京東症状の劉強東CEOは、「ネット販売業者の冬が来た。この冬で多くのサイトが淘汰されるだろう」とマイクロブログでつぶやいている。
中国ネット業界の面白さは有象無象のプレーヤーがごまんといたことにあった。正直、業界トップには慣れそうにないサイトでも、利用者数などの指標で右肩上がりの数字を出せれば投資を集めることはたやすく、結果として多くの中小プレーヤーが生き残っていたからだ。赤字を垂れ流しても投資を集められるかぎり死なないという「焼銭モード」の時代は終わり、いかに資金をキープしてライバルが死ぬのを待つかという「過冬モード」の時代が訪れた。体力に勝る大手企業が生き残り、弱者を買いあさっていくことになるだろう。カオスな戦国時代が楽しかった中国ネット業界の様相も大きく変わりそうで、大変残念に思っている。
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「タダでマンション、プレゼント」の不思議=「過冬」モードの中国ビジネス中国人も「ソーシャル疲れ」=実名制導入前に見えていた微博の陰り老舗海賊版サイトのサバイバル術=正規企業になるための長く険しい道―中国主な参考記事:
「
品聚网夭折戳破20亿投资泡沫 盛大否认投资」新快報、2012年1月10日
「
品聚网葛斌斌公布与盛大聊天记录 陈天桥:我肯定会给你的」財経網、2012年1月10日
「2012年12月には呼哈網に」->「2011年12月には呼哈網に」
ですね。
また、こちらはちょっと自信がないのですが、
「またも訴えられたアップル=「スマート海賊版小説」に作家が怒り―中国」の
「app store」(×3)は「App Store」なのかなと思っています。
http://kinbricksnow.com/archives/51767142.html