2012年1月9日、中国ラジオ映画テレビ総局映画局の童剛局長は北京市でメディア報告会を開催。中国映画界に「興行収入ドロボウ」行為が横行していると指弾した。
电影摄制组 / ComerZhao
■ 数字で見る2011年中国映画界
報告会では2011年の中国映画界の概況について説明された。中国ラジオ映画テレビ総局公式サイトの記事がいまいち詳しくないので、Mtime時光網の記事から統計数字を拾ってご紹介する。
2011年に制作された映画は791本。興行収入は前年比28.9%増の131億元(約1570億円)に達した。うち中国産映画の興行収入は70億3000万元(約844億円)。全体の53.6%と外国映画をぎりぎり上回った。国産映画の勝利は9年連続。
興行収入1億元(約12億円)超の中国製映画は20本。年末の公開にもかかわらず、チャン・イーモウ監督の「ザ・フラワーズ・オブ・ウォー(金陵十三釵)」がトップとなった。昨年末は「龍門飛甲」「失恋33日」など中国国産映画の好調ぶりが目立った。ちなみに外国産映画のトップは「トランスフォーマー3」。興行収入は11億1200万元(約133億円)を記録している。
中国映画界の興行収入の伸びはスクリーン数の増加に支えられたもの。映画館数は803館増加の2800館超を記録。スクリーン数では3030スクリーン増加の9200スクリーン超となった。
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都市だけではなく、農村での映画普及の取り組みも進められているという。農村デジタル映画配給会社は246を数え、デジタル放映隊は4万7692チームに達した。全国各地の農村でデジタル映画を放映できる体制が整ったという。2011年に農村で放映された映画は計812万3000回、観客はのべ17億5300万人に達した。放映された映画は2400種類以上だという。
■チケット代が高すぎる?!
イケイケの数字を並べ立てて、成果を誇示するというのは中国お決まりの手法。というわけで、上記概況の説明では景気の良い数字ばかりが並ぶ。スクリーンあたりの興行収入がマイナスに転じたことなど不景気な数字は挙げられなかったようだ。
お小言及び今後の指針については、より抽象的な文言で話されている。ポイントは
(1)スクリーン数が”まだ”足りない。国産映画がなかなか上映できない。
(2)チケット代が高すぎる。1人80元(約960円)が当たり前の状況を「どぎゃんとせんといかん」
(3)「興行収入ドロボウ」行為が蔓延している
の3点だったようだ。(1)については、スクリーン数はこれほど増えているのに、どこでも同じ人気大作映画ばかりを上映していて、なかなか枠に入り込めない中国産映画が多いことを問題にしている。昨年は「失恋33日」など低予算映画がヒットしたこともあり、上映さえできれば新たなヒット作が生まれる可能性もあるのではないか。
(2)についてだが、なるほど、新しくゴージャスなシネコンが増えるにつれ、中国の映画料金はびっくりするほど高くなった。1990年代後半にはじめて中国にいった時は10元(約120円)で見られる映画がごろごろあったように記憶しているが、今ではチケット代100元(約1200円)もざらだ。
もっとも中国の映画館では日時、時間帯によって料金が変動するケースが多い。クリスマスの夜などというシチュエーションだと80元どころでは済まないのが現状だ。そのかわり平日朝などは半値以下の安さ。グルーポン系サイトを通じて格安チケットも販売されている。
そうした格安チケットが販売される機会を増やしたいと童局長は発言している。いらぬ干渉のように思えてしょうがないのだが。
■興行収入ドロボウさて、お小言の中でも注目はやはり「興行収入ドロボウ」行為だろう。映画館は売り上げを権利者と分けるシステムになっているのだが、売り上げを過小に申告することで権利者への支払いを盗むという犯罪行為だ。
新型の映画館ではチケット販売システムの数字が権利者側に送られるシステムとなっているようで、ドロボウ行為を抑止する仕組みとなっている。ところが映画館側は「システムが故障したので云々」と言い訳し、システムを通さず席番号などを手書きで記したチケットを販売。売り上げを過小申告する行為が蔓延しているという。
2011年初夏公開の中国国策映画「建党偉業」は興収8億元(約96億円)達成を目指して、政府機関関係者やら学校生徒やらを招待するなどの裏技を駆使していたが、その一つに「トランスフォーマー」などのヒット作とセットでチケットを販売するという荒技も伝えられていた。
(関連記事:トンデモ奇策が乱舞!国策映画「建党偉業」の興収100億円の道―中国)
当時は「さすが国策映画!」と思ったのだが、今回の話を読むとこの手の売り上げごまかしはより一般的な手段だったようだ。1月4日付
中国新聞網は、80元(約960円)の支払って購入した「ザ・フラワーズ・オブ・ウォー」のチケットに「価格40元(約480円)」と書かれていたエピソードを紹介している。差し引き40元分の売り上げをごまかした計算だ。大ヒットとなったチャン・イーモウ新作も、本当の興行収入はもっと多かったのかもしれない。
童局長は映画館のチケット販売システムに対する監視を強化することで、「興行収入ドロボウ」行為を抑止していくと表明したが、いかにネットとコンピューターが発展しようとも全国の映画館を監視することは至難の業。ドロボウ行為の根絶は難しそうだ。
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