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電力企業に高級ヨット企業=中国の欧州底値買いが始まったのか?!

2012年01月12日

2011年12月、中国三峡集団はポルトガル電力会社EDPの株式21%を取得した。そして2012年1月、今度は山東重工業旗下の濰柴集団がイタリア高級ヨットメーカーのフェレッティ・グループの買収を発表。さかんに噂されてきた中国の「炒底」(底値買い)が始まったのだろうか?


■中国の「救済」方法

ギリシャを震源に欧州各地に波及した債務危機。信用危機に苦しむ欧州からは、世界第2位の経済大国となった中国に期待する声が上がっている。

世界第3位の経済体・日本は欧州金融安定基金(EFSF)債をせっせと購入しているが、中国は消極的だ。

大量購入、欧州と日本だけ=危機対策のEFSF債
時事ドットコム、2012年1月7日

同当局者が明らかにした暫定集計によれば、3年債の88%は欧州各国の民間銀行、投資家、中央銀行などが購入。他方、日本政府は発行額の10%を購入したといい、欧州と日本で全体の98%を引き受けたことになる。残り2%は日本政府以外のアジア勢。

昨秋、中国政府関係者はEFSF債の購入ではなく、企業買収など直接投資での「救済」を示唆していた。中国メディアには「炒底」(底値買い)という文字が踊り、中国政府系ファンド及び国有企業による欧州企業買収が注目を集めている。


■企業買収が始まったのか?

ついに中国が動いたのか、と注目されたのが三峡集団によるポルトガル電力会社EDPの株式取得(2011年12月23日)。

中国国有企業、ポルトガル電力会社を傘下に
アサヒドットコム、2011年12月23日

中国の国有企業・中国長江三峡集団は23日、ポルトガル政府から電力会社EDPの株式の21%を26億9千万ユーロ(約2700億円)で取得すると発表した。財政危機に陥ったポルトガル政府が進める財政健全化策の一環。

ドイツ、ブラジルの競合を蹴散らし、三峡集団は筆頭株主の座を手に入れた。株式取得費用に加え、2015年までに再生可能エネルギープロジェクトに対して20億ユーロ(約1950億円)を投資する方針も示している。

さらに2012年1月10日、今度は山東重工業旗下の濰柴集団による高級ヨット企業買収が発表された。

世界最大級ヨット企業買収 中国、富裕層拡大で需要増
MSN産経、2012年1月10日
中国山東省の重機メーカー、山東重工●(=さんずいに維)柴集団は10日、世界最大級の高級ヨットメーカー、フェレッティ・グループ(本社イタリア)の株式の75%を3億7400万ユーロ(約367億円)で買収することで合意したと明らかにした。新華社などが伝えた。

中国は富裕層の拡大で豪華ヨットやクルーザーの需要が増え、世界有数の市場に成長。2010年のヨットの輸入量は09年の3倍となり、今後も拡大が続くとみられている。


■中国の足枷

「これを皮切りに中国による欧州企業が買収が相次ぐのか?!」というのが注目点だが、そのあたりはまだ不透明だ。光明日報の記事「アナリスト談:欧州投資の窓はすで開いている=中国企業もチャンスをつかむべきだ」では、米国企業、日本企業はすでに「炒底」(底値買い)に動いている。中国も負けるなと煽っているが、果たしてそこまで果断な動きができるかについては疑問符がつく。

中国スピードといえば、リーダーのトップダウンによる決断の早さが売りだが、こと国有企業による海外投資に関しては厳しい審査があり、むしろ小回りが利かないというのが実情だ。海外投資に金を突っ込んでは損失を出したり、あるいは横領の手段に使われたりという過去の反省によるものだが、それが企業買収の足枷になっているという。

2011年12月26日付ロイター(人民網翻訳転載)は小回りのきかなさに加えて、中国企業に海外買収管理のノウハウがないこと、さらに欧州よりも中国のほうが魅力的な投資先であることから、中国企業の買収急増はないのではと分析している。

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