2012年1月14日、メコン川を航行中の中国商船「盛泰11号」が武装勢力に銃撃される事件が起きた。付近にいたメコン川合同巡視部隊の中国籍巡視船が急行し、対応した。15日、
人民網が伝えた。
*画像は人民網の報道。
■メコン川合同巡視部隊結成の経緯
10月5日、メコン川タイ北部流域で中国輸送船2隻が武装した兵士に襲撃され、中国人船員13人が殺害される事件が起きた。船員は拘束された後、目隠しされ後ろ手に縛られた上で銃殺され、遺体は川に捨てられた。当初は麻薬密輸組織など現地武装勢力の仕業と見られていたが、タイ政府は後に同国兵士の犯行だったと発表している。
タイ軍が麻薬密輸に従事していたのか、襲撃した動機はなにかなど、事件についてはいまだ明らかになっていないことが多い。
中国国内では自国民を守れない「弱腰政府」を非難する声が上がったほか、メコン川の水運に従事していた中国人が不安に駆られて一斉に帰国するなどの問題も起きた。対応を迫られた中国政府はタイ、ミャンマー、ラオスと協議を重ね、10月31日に合同巡視部隊を設立することで合意。12月10日、ついに巡視がスタートした。
合同巡視は危険水域のみをピンポイントでカバーするものだが、中国の兵士(なお人民解放軍ではなく、武装警察が派遣される)が海外に駐留し警戒任務につくのは、国連平和維持活動(PKO)などを除けば初の事態となる。人民解放軍は国土防衛を主眼とした構成から、海外での展開を可能にした構成へと転換の途上にあるが、その意味でも合同パトロールは里程標的な出来事と言える。
・関連記事
タイ軍兵士が中国人13人を惨殺した=メコン川中国人船員殺害事件の犯人逮捕
「日本が東南アジア侵略」と香港紙がオモシロ報道=中国の巡視部隊、来月からメコンに駐留
【写真】メコン合同巡視部隊が護衛業務を開始=中国の対テロ部隊も参加
■武装勢力の目的は?
10月の事件後、不安を感じた中国人船員たちが帰国し、メコン川の水運に影響が生じたと伝えられていたが、巡視部隊の活躍により、かつての活気を取り戻した……と中国メディアでは報じられている。
しかし、水運は復活したかもしれないが、襲撃は収まっていないのが実情だ。今月4日にはメコン川黄金の三角地帯流域ロケット砲で中国船舶が攻撃される事件が起きている。
(「メコン川で中国商船襲撃相次ぐ 深まるなぞ」MSN産経、2012年1月6日)そして15日夜に今度は銃撃される事件が起きた。1キロほど離れた地点に巡視船がいたので急行したというが、当然間に合わず。相手はラオス側河岸から銃撃してきただけで、窓や船壁に弾痕が残っている程度の被害で済んだとはいえ、脅しとしては十分な効果だったのではないか。その後、巡視船が護衛したというが、まあその程度の役にしかたたないというのが実情だろう。
気になるのが武装勢力の目的。上述MSN産経記事は
中国商船が正体不明の武装勢力によって襲撃される事件が相次いでいる。「麻薬密売グループによる縄張り争い」「東南アジアの過激派による中国人排除」、果ては「米情報機関の陰謀」とさまざまな臆測が飛び交っているが、いずれも具体的な証拠はなく謎は深まるばかりだ。
と評している。個人的には「保護料をせしめるための脅し」ではないかと推測している。襲われたくないなら金を払えという伝統的海賊商売だ。海賊たちは場所と時間を選んで襲撃できるので、たった4隻の合同巡視部隊では何もできないのではないか。
■映像で見る巡視部隊
さて、今回の襲撃事件だが、中国は手際のいいことに巡視船にアナウンサーとカメラマンを乗せており、貴重な映像がニュースで流れている。
CNTVサイトで見られるのでぜひご覧いただきたい。防弾壁の向うには真っ黒な闇が見える。もはや冒険小説の世界だ。
巡視部隊の装備が映像で確認できるのも面白い。船には液晶テレビが積まれ、作戦部隊がGPSで場所を確認できるようになっている。また今回出動したのは中国籍の船だが、ラオスの兵士も乗り込み、中国・ラオス混成部隊という布陣だった。
テレビ向けだろうが、一斉に配置につくシーンもなかなかの迫力。さすがに巡視船が真正面から戦闘をすることはないと思うので、しばらくは「襲撃されました→急行→敵はもういなくなっているけど、なんだから送っていこうか」というパターンを繰り返すのかもしれない。
もちろん昨年10月のような船舶乗っ取り及び船員殺害のような事件が起きれば、巡視部隊強化を求める声が高まりそうだ。
関連記事:
「ONE PIECEの麦わら海賊団に入りたい」中国人オタクが行きたい2次元世界―中国オタ事情中国版ガンダムが日本上陸?!鄭和の女体化漫画登場=角川中国誌『天漫』(阿井)中国並みの海賊版天国タイ=高級コピー品「マスターDVD」ってなに!?(asianet)
邦人保護を口実に軍隊外国に送り出したいだけだろ。
中国ならやりかねない。