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2012年01月20日
■ネット民、メディアの猛バッシング
記事「これは欲しい!中共官僚ご用達のスーパーガジェット、超高級中華Pad「紅派壱号」がスゴい」でご紹介した中国共産党幹部ご用達のアンドロイド・タブレット「紅派壱号」。普通のアンドロイド・タブレット(有線LAN接続が可能というステキなスペックはあるが)に、「中央指導者動向」「強国論壇」「E政治広場」「毎日決定参考」「指導者幹部マイクロブログ」「全国指導者幹部データベース」「人民日報閲読」などの官僚にとって便利なアプリを満載した機種。問題は9999元(約12万円)という価格だ。
当然のごとく、中国ネット民、メディアは猛バッシング。「原価は2000元(約2万4000円)のはず。ぼりすぎ」「経費のムダ遣い!」「購入するとキックバックもらえるんじゃね?」と猛批判されている。
■紅派壱号の先進的ビジネスモデル
ところがところが!紅派壱号の「バリュー」はそのアプリにあることが判明した。18日付南方都市報によると、このタブレットに搭載されているニュースアプリ「ネット世論」は購読料年3800元(約4万5600円)の高級情報紙。紙版は週3回刊行され、ネットの炎上ネタ、汚職官僚追求ネタ、ネット民への対策など、中国官僚にとっては必要な情報をパッケージし、あんちょことして提供している新聞だ。人民日報社が発行している。
この「ネット世論」のタブレット配信権を独占入手して作られたのが「紅派壱号」だという。通常、購入の場合は「ネット世論」の講読権は1年で切れるようだが、3年間の講読権(3800×3)を支払うと、紅派壱号が無料でもらえるという販売法もあるという。また他にも有料情報紙が閲覧できるアプリがある。つまり、9999元はタブレットの価格というよりは、新聞の購読料なのだ。
電子新聞時代を目前にひかえ、海外では「うちの電子版を2年契約したら、タダでタブレットをプレゼント」などというキャンペーンをやっている会社もあるというが、「著作権意識が希薄、ネットにアクセスすればニュースはタダで読める」が常識の中国でこの先進的ビジネスモデルを導入するとは驚きだ。
■思わぬ落とし穴
これならありじゃないか……と私の判断がぐらりと揺らぎかけたところで、気になる話が。「人民日報社は紅派壱号販売企業と独占配信権提供の契約を交わしていない」というのがそれ。ひょっとして有料情報紙を勝手にコピペして、独占配信しているという荒技なのだろうか?!
情報料金と端末代をパッケージする新時代の電子新聞ビジネスモデルと、海賊版万歳の中国モデルとを組み合わせた……ということなら面白すぎるのだが。
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