■人民日報と新華社がケンカ■
*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年1月20日付記事を許可を得て転載したものです。

人民日报 / jjgod
■「一部メディア」は批判の言葉
みんな大好き仲間割れの時間ですよ。
1月18日、人民日報は「五常大米はどれほど高いのか」という記事を掲載しました。
「米の市場価格が(1斤=500g)40~50元であるのに対し、農家は2元も手に出来ない」。最近、一部メディアが高価な五常大米の利益はどこに行っているのか、と疑問を投げかけている。五常大米は実際どれほど高価なのか。
農民の育てた優秀な稲はカネを稼げるのか。どのような問題があるのか、記者は黒龍江省五常市や、ハルピン市などの大型スーパーや生産企業を取材した。
という書き出しで始まっています。注目は「一部メディア」という表現。具体的な名称ではなく、「一部メディア」という書き方をしている場合は批判する時です。「一部西側メディア」という書き方もよくあります。ですが、今回の批判対象は中国国内メディア。しかも人民日報と並ぶ「中国共産党の喉と舌(代弁者)」である新華社がターゲットです。
■新華社の報道
1月2日、新華社は「
高級米の利益は誰が持ち去ったのか」という記事を掲載しました。
黒龍江省のブランド米・五常大米は1斤(=500g)40~50元(約480~600円)もする高級品。「特別提供礼品米」と呼ばれる贈答用になると199元(約2390円)もするそうですが、農家はたった1.9元(約23円)で生産基地に卸しているといいます。
五常米農家の張宏雷さんを例に取ると、20ムー(1ムーは約6.67アール)の農地に費やすコストは2.2万元(約26万4000円)。生産量は2.5万斤程度。1斤2元で計算すると、収入は5万元(約60万円)となりますから、稼ぎは差し引き3万元(約36万円)にしかなりません。
問題は農家から買い取る企業だと農家は口をそろえています。2元で仕入れた米を50元で売ればぼろ儲けでしょう。企業は「覇王契約」と呼ばれる農家に不利な契約を交わしていることが多く、しかも契約された金額で買い取らないこともままある。
というのが新華社の報道です。
■人民日報の報道
企業ひどい、農民かわいそうという内容の新華社報道に対し、人民日報は丁寧な取材で反論していきます。
五常米は高級米とはいえ、スーパーでは1斤8元(約96円)程度で売られている。199元の贈答品はメーカーの話題づくりの品でほとんど流通していない。買い取り価格の1.8元は最低価格で、品質によって0.5元から1.5元(約6~18円)の上乗せがあると指摘しています。
どちらが正しいのかについてはあまり興味がないのですが、共産党機関紙である人民日報と中国政府の一機関である新華社が食い違うのは珍しい事態です。しかも後追い報道となった人民日報は、明確に新華社報道を否定する展開です。
人民日報と新華社の立場の違いについては大した認識はなかったのですが、こういうことが続くようなら背景を考えなくてはなりません。なかなか興味深い事例となりました。
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*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年1月20日付記事を許可を得て転載したものです。