• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

共産党も頭を悩ます「農村の支配者」=前科者を雇って暴力組織を結成―中国

2012年01月25日

2012年1月16日、RFA中国語版(前編後編)は、親子二代が村書記として「支配」する福建省福州市倉山区嶼宅村について報じた。村書記は前科者を集めた「護村隊」を組織。従わない村民たちに暴力を振るっているという。


The 2nd invitation
The 2nd invitation / torilla


■烏坎村の衝撃

 昨年末、広東省陸豊市烏坎村が世界的な注目を集めた。

「烏坎に続け」 視察相次ぐ 中国「腐敗糾弾の村」
東京新聞、2012年1月22日

 <烏坎村事件> 昨年9月、村トップの共産党村支部書記が公有の土地使用権を勝手に売買し、その売却益の着服に怒った住民が抗議デモを決行。自治組織をつくって上部機関の広東省政府に調査を求め続けたが、昨年12月に自治組織の中心人物が警察当局の取り調べ中に急死。その後、抗議活動が激化したため、省政府はようやく村民の要求を受け入れ、村幹部の更迭など異例の決定を下した。

村書記を追い出した村民たちが選挙で新たな書記を選んだこと、そして広東省政府が最終的には村民たちの要求を受け入れ、村民たちが選出したリーダーを書記として認めたという画期的な事件となった。あるいは烏坎村モデルが中国全土に広がることで、基層社会における民主選挙が導入されるのではとの期待も高まっている。


■中国共産党をも悩ます「村の支配者たち」

烏坎村の成功も驚くべきことだが、その前に追放された村書記の「暴政」ぶりも十分驚くに値する。なんと40年間にわたり村政府のトップの座を占めており、村の共有地を勝手に売り飛ばしてはその代金を懐に入れるという好き勝手を続けていたのだ。

40年といえば、文化大革命終了前の話である。中国の汚職官僚といえば、改革開放後の高度経済成長に伴う利権取引で大もうけというイメージがあるが、それは都市や上級政府の話。農村では数十年間変わらぬトラディショナル「暴政」が続いていたりする。

この村書記の「暴政」、共有地の勝手な売却と横領というのは、烏坎村に限らぬ中国の定番ネタであり、中国政府にとっても頭の痛い問題である。昨年11月、人民日報は「幹部と群衆関係に「信頼の礎」を築け」という社説を掲載している。「基層幹部は社会統治の最前線であり、直接大衆と向き合っている。実質上共産党と政府のスポークスマンであり、その能力と態度が現地大衆の党の評価に影響する」という内容だ。

中国共産党中央も「村の支配者たち」をどうにかしたいと考えているだろうし、 村レベルでの民主制拡大はすでに現実的な政治課題となっているが、農村基層社会での民主選挙導入は思わぬ副作用を生む危険性もあるとなかなかタイムスケジュールに上がらないのが現状だ。


■暴力の時代を迎えた中国

前置きが長くなったが、その意味ではRFAが伝えた、嶼宅村における親子二代の村書記による支配はさほど驚くべき内容ではない。この村でも定番のごとく共有地の勝手な売却とその金の横領が行われていたという。ちょっと驚いたのは、帳簿の閲覧を求める村民たちを村書記配下の暴力組織、「護村隊」によって痛めつけていたというエピソードだ。 

記事によると、ネット経由で集めた人員と前科者から構成されているという。村書記の不正を追及する村民のリーダーは数度にわたり暴行されたと話している。

こうした暴力沙汰を担当する人間のことを中国語で「打手」というが、今や各地で引っぱりだこの存在ではなかろうか。官僚とつるんで汚れ仕事を担当するマフィア、金持ちのガードマン、みかじめ料をせしめる暴力団組織、さらには出稼ぎ農民の自衛組織の腕っ節担当などなど。

さらにこうした民間暴力組織だけではなく、官制暴力組織にまで目を向けると、警察、国内安全保衛局、対暴動警察、武装警察、そして人民解放軍と治安維持要員の需要は高まるばかり。先日も新疆ウイグル自治区で警官大募集中などというニュースが報じられていた。

暴力市場の拡大はそのまま統治コストの増大に跳ね返る。暴れる方も取り締まるほうも人数が増えるのだから当然だ。高成長が続いて暴力コストをまかなえるうちはいいが、成長が鈍化したら治安コストの負担は現実的な政策課題として浮上しよう。

人権問題はもちろん重要だが、加えて統治コストという内政問題、経済問題が中国の潜在的リスクとなっている。

関連記事:
官の暴力と民の暴力=弱き労働者を助ける同郷会、兄弟会というマフィア―中国
官僚を辞めてマフィアのボスになった男=地方官僚と黒社会の結託―中国
上海のミスタードーナツ店、破壊=「長期契約で家賃節約」の工夫があだに―上海市


トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ