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中国共産党の北朝鮮的チベット支配=100万枚の領袖像配布で個人崇拝強要

2012年01月25日

中国共産党による過酷なチベット支配。なんか気づいたら北朝鮮のようなことをやっていた。


■100万枚の領袖像

2012年1月22日、旧暦大みそかのこの日、チベット自治区ラサの自治区共産党庁舎では国旗掲揚及び領袖像の序幕式典が開催された(西蔵日報)。

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*画像は西蔵日報の報道。

自治区高官の後ろに見える庁舎。その壁に貼り付けられた巨大な絵が領袖像だ。毛沢東、鄧小平、江沢民、そして胡錦濤の4人が描かれている。

実は昨年からチベットではこの領袖像を100万枚作って各家庭に配るというキャンペーンが始まっている。チベット自治区の人口は約300万人(うちチベット人が270万人)。3人に1枚という計算だ。一家に一枚、領袖像ということらしい。

20120125_写真_チベット_領袖像_2
*画像は山南網の報道。チベット自治区山南地区での領袖像授与。


■僧院には豪華9点セットをプレゼント

一般人には領袖像だけのプレゼントということらしいが、チベット各地の僧院には豪華9点セットがプレゼントされる。「九有政策」というこのプランでは、西蔵の全寺院に「領袖像、国旗、道路、水道、電気、ケーブルテレビ、映画上映設備、書室、官制新聞(人民日報、西蔵日報)」を備えさせる方針だ。すべての経費は自治区財政でまかない、寺院の負担にはしないという。

思想統制と経済的恩恵による懐柔に加えて、僧院を娯楽施設に変えようという狙いなのだろうか。ラサ晩報はジョカン寺など主要僧院ではケーブルテレビの設置が終了し、「多くの僧侶、尼僧たちの歓迎を受けた」と報じている。


■時代錯誤の個人崇拝強要か、あるいは恐怖の統治の可視化なのか

領袖像の問題について、ブログ「ちべログ@うらるんた」の記事「チベットで「中国共産党指導者の肖像画を飾らせようキャンペーン」」がとりあげている。その中でチベット人作家ウーセルの「チベット自治区は新しい自治区書記陳全国の指導の下、正式かつ厳かに文化大革命の捲土重来を迎えている…」との言葉が紹介されている。
(陳全国は昨年8月、チベット自治区委書記に就任した。)

最近、チベット人の間で相次ぐ焼身抗議でも「チベット文化を守れ」というスローガンが唱えられていることが多いが、まさに文化大革命的な文化抹殺がチベットで進行している証左と言えよう。

同時に領袖像100万配布という古くさい手段には、なにやら北朝鮮的支配を復活させようとしている時代錯誤の印象を受ける。昨年12月、金正日の死去を受け、北朝鮮国民全員が悲嘆にくれる姿は中国の人々、とりわけ毛沢東死去当時を覚えている人に大きな衝撃を与えたという。

「毛沢東が死んだ時、中国人は太陽が失われたと思った。世界の終わりが来たんだと思った。だけど、太陽は変わらず昇ったんだ。北朝鮮人民にも幸運は残されているだろうか」

「毛沢東個人崇拝時代の中国と北朝鮮は似ている。突然の死去の報を聞けば、自然と悲しみが湧いてくる。今、中国人の生活は違う。誰が死のうが関係ない。飢えることはないからだ」

「毛沢東が亡くなった時、私は小学2年生だった。クラスメートはみんな泣いていた。私は恐怖に駆られて先生に質問したことを覚えている。毛主席がお亡くなりになってしまったら私たちの生活はどうなるのでしょう?学校をやめて働かないといけないのでしょうか、とね」 

毛沢東の死後、中国は個人崇拝をやめ、改革開放の道を選び、今の成長を勝ち取った。ところがチベット自治区ではかつての中国、今の北朝鮮同様の個人崇拝を復活しようというのだろうか。

あまりに時代錯誤で実現しようはずもない試みに思える。チベット自治区共産党はそれでも無理を通そうとしているのだろうか。あるいは個人崇拝はさせられなくとも、共産党の監視が隅々までいきわたっているという恐怖の象徴として領袖像を配っているのかもしれない。

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