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解読「蒼井そらの中国人気」=反「反低俗」とネット精神の象徴から一般的人気へ―中国紙

2012年01月26日

2012年1月20日、南方都市報は、著名ネット民・虚偽@現実氏のコラム「蒼井そらはなぜこれほどの人気となったのか?」を掲載した。


■中国人有名タレントを圧倒、企業家にも大人気の蒼井そら

15日、北京市で大手ネットアパレル企業・VANCL (凡客)のイベントに参加した。人気作家の韓寒、人気歌手の李宇春(クリス・リー)、女優の王珞丹、俳優の黄暁明など人気芸能人が顔をそろえたが、この日の注目は蒼井そらがかっさらったといっても過言ではない。有名企業家がベアハッグのように強烈にハグする写真がネットに公開され、「なんじゃこりゃ」と話題になっている。

20120126_写真_中国_蒼井そら
*画像は大牌網の報道。

中国での蒼井そら人気は日本でもたびたび報道されるところ。ただ、「中国男はAVが好きすぎる!」と思っているという理解はちょっと間違っているように思う。AV女優だからこれほど人気になったのではない。彼女の持つ能力と、そしていくつかの条件が組み合わさって、この人気が生まれたのだ。

以前にも「KINBRICKS NOW」でこの点について触れたことがあるが、中国紙のコラムで中国人自身が分析しているのが興味深かったのでご紹介したい。


■中国紙コラムが分析する蒼井そら人気の秘密

2011年、蒼井そらは飛躍し、中国本土の宅男(オタクの訳語、ただし引きこもり、インドア派ぐらいの意味)と非宅男の「肉天使」となった。

蒼井そらはなぜ中国でこれほどの人気を得たのか。私の見るところ、3つの要因がある。(1)彼女自身の魅力と個人的ブランド、(2)当局の黙認、そして(3)反「反低俗」という社会的心理とネット精神だ。

(1)
蒼井そらは魅力的な女の子だ。可愛らしい笑顔と小柄な体つき。書道ができて、簡単な中国語もできる。それに賢明で優しい心も持っている。私は彼女のブログの2つのエントリーをずっと覚えている。一つは「たとえAV女優であろうとも、たとえ放浪の武士であろうとも、たとえニートであろうとも、たとえどんな職業であろうとも、人はみんな自分の感情を持っている。人は自分自身を否定することはできない。たとえすべての人に否定されようとも」というものだ。中国の人気文芸雑誌に掲載されている文章よりもよっぽど感動させる言葉だ。

もう一つのエントリーは「いろんなタイプの男を見てきたけど、結局、男の最大の特徴っていうのは単純だということ。いくら年齢を重ねても子どもみたい。もし彼女に成熟ばかりを感じさせる男がいたら、それってその彼女は相手の心の中まで入り込めていないって異だと思う」というもの。いやはや、「蒼井そら先生、あなたは男をわかっていらっしゃる」と褒めたたえるしかない。


(2)
蒼井そらが中国本土で仕事するには当局の黙認が必要だ。そして現在まで当局が取り締まった様子はない。なぜ日本のAV女優が取り締まりに会わないのだろうか?映画「ラスト、コーション」に出演した女優・湯維は過激なヌードシーンのために処罰された。しかし日本の女優が脱いでも中国をおとしめることにはならないという当局の判断なのだろうか?なぜ取り締まられないのか、分かる人がいたら教えて欲しい。


(3)
中国本土での人気を考えるためには2つの重要なポイントがある。第一に彼女が中国進出を果たした時はまさに「反低俗キャンペーン」の只中だったということだ。それだけに人々は熱狂的に蒼井そらを支持した。国民には「低俗」の権利がある。その反発が蒼井そら人気へとつながった。もちろんファンの多くは政治に関心はないだろうし、この点をあまり大きく評価しすぎるのも危険だろう。ただし「低俗」を愛することは、権威を溶解させるパワーを持っていることには留意しよう。

もう一つのポイントは、蒼井そらの人気は主にネットを通じてのものだという点だ。ほとんどの人がネットを通じて彼女との距離を縮めていった。蒼井そら人気の影にはネットのカーニバルがあるのだ。人々は蒼井そらのことを「徳と才能を併せもつ蒼井そら先生」(徳芸双馨的蒼井空老師)と親しみを込めて呼ぶ。これは反逆精神、脱構築精神、伝統の転覆、規範の蔑視、尊厳の揶揄などのネット精神がはっきりと現れている。「蒼井そら」という言葉はもはや暗号、キーワードのようなものなのだ。その暗号を受け取った人々はにやにやと笑う。

まとめよう。蒼井そらの人気は私たち中国人の態度から生まれたものだ。その態度は中国の苦しい現実、満たされない欲望、そして制約に根ざしたもの。私たちが蒼井そらを求めるのは本能である。そう、それは自由を求めるのと同じことなのだ。


■2人目の蒼井そらは生まれるのか?

上記の分析はやや政治的分析に偏りすぎという嫌いもあるが、基本的にはほぼ同意する。ちなみに蒼井そらの中国での人気は以下のような段階を踏んで拡大してきた。

2010年4月11日、中国ツイ民の間に「蒼井そらのツイッター・アカウントがあるぞ」との情報が流れ、フォローすることがブームに。上記分析にある反「反低俗キャンペーン」的な意識が原動力となった。ちなみに芋づる式に他のAV女優もフォローされたひとが多くいた。俗に「蒼井そらの夜」と呼ばれる。

2010年4月14日、青海地震が発生。蒼井そらは壁紙ダウンロード販売での募金を募る。これが中国に伝わり話題に。

2010年11月、ツイッターでの蒼井そら人気に目を付けた新浪微博が蒼井そらを勧誘、新浪微博アカウントを開設させる

そこそこ中国語が話せる上に、中国ネット民とも交流しようという意識も高い蒼井そら。中国微博民の要望に応えて、得意の書道でキーワードを書くなどの交流企画を独自に敢行。気づけば当初のツイ民たちの思惑を超えて一般的な人気を獲得。

まとめると、ポイントは二つ。一つは反「反低俗」とネット精神のアイコンとして蒼井そら人気は離陸したという点だ。AV女優を「徳と才能を合わせ持つ」とたたえれば、それで既存の社会規範に叛逆した気になれる中国ネット民の幼稚さには閉口するのだが……。 

第二にそれだけではなく、中国語は完璧ではないにせよ、積極的に中国ネット民と向き合ったことがその後の人気拡大を支えたということだ。

AV女優しかり、アニメ声優しかり、あるいはジャニーズやAKBなどのアイドルしかり。中国にも一定のファン層がいる日本芸能人が「中国マイクロブログさえ開設すれば、自分も蒼井そら並の人気になるんじゃないの?」と思えば勘違いだろう。

蒼井そら人気を生み出したのは、人気AV女優という肩書きはもちろんのことながら、加えて本人の資質と時代のタイミングという2つの条件がそろった点にある。これを別人が再現するのはなかなか困難だろう。

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