2012年1月24日、広西チワン族自治区柳州市でミネラルウォーターの買い占め騒ぎが起きた。同市を流れる川の上流で安全基準値の3倍ものカドミウムが検出されたことが広まったためだ。騒ぎを受け、市政府は慌てて記者会見を開き、すでに水質に問題はないと発表するお粗末な展開となった。26日、
ドイチェ・ヴェレ中国語版が伝えた。
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中国南部でカドミウム垂れ流し、市民はペットボトルに殺到 中国
AFP、2012年1月26日
国営新華社(Xinhua)通信によると、柳州で15日、河川で魚が死んでいるのが見つかったことから当局が調査したところ、金河鉱業(Jinhe Mining)がカドミウムを河川に垂れ流していたことを発見。その濃度は政府が認可するレベル上限の3倍を超えていたという。25日の再調査では下流からも高濃度のカドミウムが確認された。
26日付の上海(Shanghai)紙「東方早報(Oriental Morning Post)」によると、飲料水は安全との地元政府の呼びかけにも関わらず、柳州のスーパーでは飲料水のペットボトルをカートに満載した市民らであふれているという。
柳州では1週間かけてカドミウムを中和する薬剤を河川に投入したことから、市当局は市内の水道水は安全だと強調している。
■養殖魚の死で明らかになった汚染
汚染源となったのは広西チワン族自治区河池市宜州市の広西金河鉱業株式有限公司。河地市は「有色金属の郷」と呼ばれ、鉱業企業が集中しているという。有色金属生産には多くの汚染物質が伴うが、浄化コストをケチって排水をそのまま垂れ流していたといういつものパターンと見られる。
15日、龍江河の第一水力発電所の養殖場で、一部の魚が死んでいるのが発見された。当局が検査した結果、龍江河宜州市流域のある地点では安全基準値の3倍ものカドミウムが発見されたという。この検査結果は19日までに判明していたというが、公表されることはなかった。もちろん市民への警告もない。
■ドタバタの記者会見
できればこのまま何事もなかったかのようにやり過ごしたかったのだろうが、事実を隠し通すのは難しい。カドミウム汚染の噂は広がり、24日夜、下流の柳州市で騒ぎが起きた。市民らがスーパーに駆け込み、ミネラルウォーターの買い占めを始めたのだ。
この事態を受け柳州市政府は25日に記者会見を開き、汚染の事実を認めた。またダムの放水量を増やし水を希釈、さらに中和剤を川に投入することで汚染の解消に努めていたと説明している。25日時点でカドミウム濃度は安全基準内に収まっており、水道水にも問題はないという(
新快網)。
■垂れ流しはいつから始まった?
気になるのは、カドミウム汚染水の垂れ流しがいつから始まっていたかということだ。発覚するきっかけとなった養殖魚の病死もそんなに数は多くなかったという。発覚していなかっただけでカドミウム汚水の垂れ流しはずっと続いていた可能性もありそうだが、この問題についてはいまだ明かされていない。
また香港大学環境毒理学の顧冀東教授は、ミネラルウォーターも安全だとは限らないと指摘する。ミネラルウォーターの多くは水道水を加工したもの。各地水源の汚染が続けば、ミネラルウォーターも安全ではなくなるという。危険だと感じた場合には活性炭で簡易濾過をするなどの自衛策が必要だと話している。
カドミウムといえば、イタイイタイ病の原因物質。日本人には深く恐怖を刻まされた物質である。中国ではカドミウムをはじめとする重金属汚染が広がり、水だけではなく耕地の汚染も拡大しているという。「ただちに」健康被害がでるわけではないが、今回の事件のように当局が汚染隠しをしている事例も多い。中国でもすでに「ガンの村」が出現するなど、公害病被害は拡大しているというが、このままいけばさらに大きな被害へと拡大する可能性は大きそうだ。
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